冗談
□一つ屋根の下A
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ふと隣を見れば、出場者その1は、フォークなどどこかへ捨ててしまい、素手で顔にケーキをぶち当てるような食べ方をしている。
生クリームの殆どは口を外れているものの、かなりのスピードで消化していることは確かだ。
(…見ろ竜崎、お上品な食べ方をしている場合じゃ―――)
イライラが高じたライトが、野次を飛ばそうと竜崎に視線を移した時。
竜崎は既に二枚目の皿を空にしていた。
(???)
まさか。
いや、ちゃんと見てみよう。
竜崎は、慈しむようにケーキの苺にフォークを刺し、
次の瞬間には、苺はもちろん、ケーキの半分が消えていた。
…馬鹿な!!!
瞬き一回の間だぞ!?
ライトの瞬き×4。
それに対し竜崎の平らげたケーキ×2。
明らかに大自然の摂理に反している!
「ど…どうなってるんだ?」
同意を求めて後ろを振り返ったライトだが、ニアもマットもPSPの真っ最中だった。
ワタリはというと、完全にジェネレーション・ギャップを食らって日向の老人と化している。
「いいよな〜ニアは。こんなの幾らでも買ってくれるヤツがいるんだもんな」
「日本の玩具は実に手が込んでいて好ましいです」
「おい!お前ら遊んでないで、応援しろよ!」
ライトの切ない訴えに、二人はけだるげな眼差しを送る。
「あ?だって食ってるだけじゃん」
「勝ったら教えてください」
「馬鹿!いいから見てみろよ、竜崎のあの食べっぷり…」
すると、ニアは急に不機嫌な顔になった。
「夜神月」
「……なんだよ」
「自分の策がうまくいったのをひけらかしたいのは分かりますが……」
「違…いいか?僕は」
「あ、やべ、あれ取るの忘れた」
「戻りましょう、戻りましょう」
ライトのファイトは風に流れた。
全く最近の若いのは…。
歯噛みしながら視線を戻すと、そこには既にケーキを完食し、出場者その1の残りのケーキを羨ましそうに眺める竜崎の姿があった…。