本気
□レスター'sレポート
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搭乗手続きを済ませ、飛行機の座席に体を沈めると、これまでの疲れがどっと押し寄せた。
窓際の席にいるニアは、空港で買った飛行機の玩具をサイドテーブルの上で走らせている。
私は目を閉じ、波のような睡魔に身を預けることにした。
夢を見た。
私は草原を走っている。
隣を息子が走る。
久しぶりに見る息子は、少し背が伸びたようだ。
別れた妻が遠くで笑んでいる。
もう少しだ。
息子が私に何か叫ぶ。
聞き返そうとしたその時、
ゴトトッガラガラガシャ〜
盛大な音で目が覚めた。
足元にニアの頭がある。
どうやら、勝手に玩具のトランクを開けようとしてぶちまけてしまったらしい。
「…失礼しました」
「ああ、いや…」
歯切れの悪い私を気に留めず、ニアは怪獣の玩具を三つ選び取りテーブルに並べていく。
一つは、羽根のある虫のような姿をした怪獣。
もう一つは、長い首が三つもある竜のような怪獣。
そして最後は、今にも火を吹きそうな尻尾の長い怪獣…これは私のテーブルに置かれた。
「夢を、見ていた」
ぼんやりと言った私の言葉に、ニアはちらりと視線だけを返す。
窓の外には空以外の景色はなく、薄桃色の雲が歩けそうな立体感でもって広がっていた。