マンキン夢小説

□from Y to Y
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「僕は君の事が大嫌いだ」

突然放たれた貴方の言葉。それは重く鋭い刃になって私を貫く。憧れてたその黒髪が貴方の顔を隠して表情を読み取らせてくれない。どうして?あんなに愛を囁いてくれた唇は冷たくなってしまったの?

貴方の背中が遠い。手を伸ばしても届かない。視界だけが歪んでいく。

「行かないで…行かないで!!」



****



「ごめん…」

僕は小さく呟いた。足が思うように前に進まない。全身に重りを付けた鎖を巻き付けられたように体が重い。
…泣かないでくれないか。僕の視界が雨で覆われてしまうから。方向音痴の僕は迷子になってまた逆戻りしてしまうんだ。君のもとに帰ってはいけない。強がりだと分かってる。君と子ども達と一緒に暮らせたらどんなに楽しいか…。そんなことを考えると自分がしてきた過ちに足を囚われてしまうんだよ。



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二人で一緒にいたこの部屋は渇いてしまった。今まで積み上げたものが固体化して隙間を作った。冷たいすきま風がその隙間を通りすぎていく。重く響く秒針の音が時を告げる。

「一緒に居たいよ…」



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君の幸せを願おう。もし、それさえも許されないなら僕は何故神になったのだろう。どうして神になりたかったんだろう。君の涙を見るぐらいならこんなものになるんじゃなかった。
・・・いや、最初から出会わなければ良かったんだ。君という存在さえ知らなければこんなに辛い思いをすることはならなかった。その手の暖かさや側にいる安らぎに触れなければ良かったんだ。僕は君をまた愛せたことに酔って君を傷つけた過去を忘れ去った。君が苦しんでることに気づかなくて。
僕という災厄のことなんかすぐに忘れて良いんだからね。そんな存在に過ぎないんだから。




****



「あの頃には戻れないの?」



「これはプロローグ?それともエピローグ?」



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楽しい夢もただの虚像に過ぎなくて、寒がりな私を暖めてた貴方はもういない。お願い…、夢にまで現れないで。



****



寂しい。僕は皆を見てるけど、皆は僕を見てくれない。誰も僕の存在に気づいてくれない。どんなに嘆いても、これは全てを犠牲にして手に入れた僕の結果だ。もし、世界中の人間がハオという人間を忘れても君にだけは僕のことを覚えてて。




****





貴方と別れて数年経った。

「ママ、志王、早く〜!」

貴方似の娘は貴方と同じ無邪気な笑顔を浮かべて駆けていく。

「こら、葉乃。そんなに急ぐと転けるぞ!」

私似の息子がその後を追いかける。子どもの頃の私達にそっくり。ねぇ、そうでしょ?

「ハオ……」

舞い散る桜吹雪の中、貴方の姿が見える。

「迎えに来たよ」

ゆっくりと差し出された右手。
その手を掴んだ私の左手。


 
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