詰め合わせ3
□紅をさす
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ふわりふわりと綿毛のような雪が降る。
景観変更をしてだいぶ経つが、それでもその様子は美しくて儚い。
「体、冷えますよ」
火鉢を用意した江雪の言葉にゆっくりとそちらを振り返る。
内番服の上から羽織りを重ねる彼に、ゆっくりと笑みを返した。
「ありがとう、気を使ってくれて」
窓際は確かに冷える。
かじかんできた手を擦り、凍った指先を温める。
寒さで赤らんだそれは見る人によっては痛々しいのかもしれない。
「失礼します」
そう言って手を包んだのは江雪のそれだった。
火鉢を持ってきたからか普段よりも温い。
じわじわと熱が移ってくる指先は、なんだかもぞ痒い。
「あなたの手が冷えてしまいます」
そう言って手を引き抜こうとするが、彼はそうはさせてはくれない。
むしろ離れないように少しばかり力が加わる。
「私に熱を与えてくれたのはあなたですから、私から、今くらいは」
そう尻切れとんぼのように言うのは珍しい。
しかし言わんとすることを汲み取れたからには、それを否定することも出来ず。
江雪の気が収まるまで手を握られていた彼女は、むしろ顔の方が熱を帯びていた。
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