詰め合わせ3

□まる二つ
1ページ/1ページ


ぷちぷちとさやえんどうの筋を取る。
地味な作業を一生懸命やるその横に腰を下ろしたのは、内番姿の和泉守兼定だ。


「なーにやってんだ?」
「んー?お夕飯のお手伝い。兼さんもやる?筋取り」


さやえんどうを見せながらそう言えば、なんとも言えない返事。
しかしその手はそれをちゃんと受け取ってくれた。


「どうすりゃいいんだ?」
「ここを取って、ピーッて」


やり方をゆっくりと見せれば、覚束無いながらに真似をする和泉守。
細かい作業だからか、次第に丸まっていく背中。
丸い背中が2つ並ぶ姿は、あの大福アイスのようだ。
ちまちまと作業をしていれば、ポツポツと短い会話が間に挟まる。
とは言ってもさして深い話ではなく、取り留めないことばかりだ。
こんなに筋取りしてどうするのかとか。
一昨日風呂に入れた入浴剤の匂いは好みだとか。


「あ、これで最後だ」


最後の一つのさやえんどうの筋を取り、別々に分けられたボウルを持って腰を伸ばす。
パキパキの鳴って骨があるべき位置に戻っていく感覚に二人して情けない声が出る。


「手伝ってくれてありがとうね」


そう言って厨に向かったその後では、彼が静かに桜を散らしていた。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ