飛び降り指揮者
□私と私
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「これはね。吸血鬼のために作られた弾丸。他のとは違うんだ。」
『ア"ア"ア"ァ"・・・ッヴアァアアァ!!!』
打たれた部分から、急激に痛みが強くなった。
血管内を何かが入り込んでるような痛みに、声が漏れる。
こんな痛みを感じるぐらいなら、殺してくれといいたくなる。
「僕さ、考えたんだ。ブロードの王様と王女が二人揃わないほうがいいんじゃないかって。
絶対的な力をもってる人が二人いたらさ。
周りが付いていけなくて、殺し合いもつまらなくなる。
あぁ、別に殺しあいたいわけじゃないんだよ?僕は傍観していたいだけ。
だから、見てる側も楽しくなるようなゲームを作るには・・・・
一人かけてたほうがいいんだよねぇ?」
『あ"ぁ"っ!!』
痛い痛いっ苦しい息が上手くできない、生理的に涙が出てくる、声が押さえることもできないほど辛い。
「紀李っ!!!」
誰?痛いよもういやだ。
助けて・・・!
ガブッ
『っぁ・・・!』
首元にも痛み、なんでこんな事ばっか・・・
違う・・・・痛みが和らいできてる・・・・?
「紀李!!!しっかりしろよっ!!」
『翠・・・・』
さっきまで眼を開けれないほど痛かったのに、普通に言葉まで出せるようになる、それと同時に何かの映像が流れる感じ。
”奏蓮おにいちゃん”
お兄ちゃん・・・私のお兄ちゃん私と違って真っ赤な髪色のお兄ちゃん。
私とは腹違いの・・・・・あれ?これは誰の記憶?
”紀李?一緒にパパとお兄ちゃんの帰りを待ってようね?”
”うん”
お母さん・・・・?
笑顔で答える小さな子・・・・あれは私?
”穢れた血よ!!人間の汚れたっ!!!”
心臓がドキッとする。
恐怖だったな、彼女の名前は・・・朱羅・・
”ねぇ、いつまで思い出さない気でいるの?”
急に真っ暗な空間が見えて、小さな小さな黒髪の子が目の前にいる。
”気づいてたんじゃないの?本当は”
『違う。知らないよ!』
私は真っ黒な空間で立ち上がる。
目の前の小さい子と正面から向き合った。
時々、何かの知らない記憶が私を邪魔する時があった。
あの記憶は私じゃないんだよ。
私は、この世界の住人じゃないただの女子中学生だったんだ。
私じゃない!
”知りたくなかった?私はおねえちゃんじゃない。おねえちゃんと私は同じ体を共有しているんだよ?”
貴方は私、私は貴方。
”新しい記憶の保持者はただの人間に成り代わったの。だけど私がおねえちゃんの心の中で生きていたの。だから、違う世界でも、吸血を求めてたのは私の性”
吸血鬼の私と、ただの人間の私が無意識に一体化していた。
この世界──桃源郷は前の私の生きる場所だったから、私の知らない記憶が夢でいつもより多く見ていたのか。
”だから、奏蓮お兄ちゃんに好かれていたのは吸血鬼の私の方だよ?ただの人間の生活を送ってきたおねえちゃんじゃないの。返して
!!”
『・・・・っ!』
どうして体は一体化しているのに、心が別なの?
──もういっそ、別世界に飛ばしてみて判断しようか
ふと頭に響きわたる声。
前に見た夢で起きた実験の場所。
6歳以下の記憶がないのは、今目の前にいる私が持っている。
別世界・・・地球に飛ばされた私はその反動で記憶をなくして送り込まれた?
だけど、それでも心の奥に眠っていた記憶が無意識のうちに体に覚えさせていて、吸血をすることを好んだという事でしょ。
でも、私は”此処”に戻された。
だから、元の場所に住んでいた私が記憶を取り戻す環境にいるから、人格が二つに分かれたという事・・・・?