飛び降り指揮者

□私と私
3ページ/5ページ



幸せに手を伸ばしてしまった。


人を好きになってしまった。


感情が抑えられなかった。


それが罰だ、



”お前が幸せになる資格はない”とさんざん言われてきたのに。







此処は本当の居場所じゃない。

生まれ育った場所じゃないと、頭の中では忘れずに響かせていた。






「紀李、愛してる。」




私を呼ぶな、ずっと苦しませてたくせに、幸せは私にとって毒でしかない。






だから、愛しい人を傷つけてしまったんじゃないか。




























「紀李!!!しっかりしろ!!」



『紅・・・』





赤くて紅くて赤黒くて。


どろどろした、美味しい液体は今はただの恐怖でしかない。



「──・・・・っ」





「おいっ!!奏蓮!!!大丈夫か。」



「あーあ。一発目で終わっちゃた?」




おかしい。




この法衣来た男狂ってる。





「貴様っ!!!」


動けない私は、弱いから。





私を標的にした銃口は、目の前に飛び出した翠にあたった。



横っ腹から血が溢れ、口からも血を吐き出す。




「そんなに弱いわけ無いよねー?ブロードの王様がね。」






「うるせぇよ・・・こ・・・んな・・・事でっ死ねるか・・・よ。」



弱弱しく吐き出される声をただただ、私は聞いてるだけだった。




「紀李っさっさと逃げろ。」



紅は翠の目の前に立ちふさがり、男と翠を近づけないようにする。





もう・・・・・・やめてよ・・・







もう・・・・




『やめてよっこんなの!』


望んでない。



翠の為なら私はいつでも死んでやる。



だから・・・・






『しんで・・・・・もらわなきゃ・・・。』


目の前の男を・・・・・殺さなきゃ・・・








ガウンッ





一瞬だった。






腹部に痛み



熱くて熱くてとかされそうで。



視界が揺らいだころは、私は地面に倒れてた。




『っ・・・・』
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ