飛び降り指揮者
□私と私
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幸せに手を伸ばしてしまった。
人を好きになってしまった。
感情が抑えられなかった。
それが罰だ、
”お前が幸せになる資格はない”とさんざん言われてきたのに。
此処は本当の居場所じゃない。
生まれ育った場所じゃないと、頭の中では忘れずに響かせていた。
「紀李、愛してる。」
私を呼ぶな、ずっと苦しませてたくせに、幸せは私にとって毒でしかない。
だから、愛しい人を傷つけてしまったんじゃないか。
「紀李!!!しっかりしろ!!」
『紅・・・』
赤くて紅くて赤黒くて。
どろどろした、美味しい液体は今はただの恐怖でしかない。
「──・・・・っ」
「おいっ!!奏蓮!!!大丈夫か。」
「あーあ。一発目で終わっちゃた?」
おかしい。
この法衣来た男狂ってる。
「貴様っ!!!」
動けない私は、弱いから。
私を標的にした銃口は、目の前に飛び出した翠にあたった。
横っ腹から血が溢れ、口からも血を吐き出す。
「そんなに弱いわけ無いよねー?ブロードの王様がね。」
「うるせぇよ・・・こ・・・んな・・・事でっ死ねるか・・・よ。」
弱弱しく吐き出される声をただただ、私は聞いてるだけだった。
「紀李っさっさと逃げろ。」
紅は翠の目の前に立ちふさがり、男と翠を近づけないようにする。
もう・・・・・・やめてよ・・・
もう・・・・
『やめてよっこんなの!』
望んでない。
翠の為なら私はいつでも死んでやる。
だから・・・・
『しんで・・・・・もらわなきゃ・・・。』
目の前の男を・・・・・殺さなきゃ・・・
ガウンッ
一瞬だった。
腹部に痛み
熱くて熱くてとかされそうで。
視界が揺らいだころは、私は地面に倒れてた。
『っ・・・・』