飛び降り指揮者
□実験室と探し物
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俺がいるこの研究室は、吸血鬼を研究するところだ。
吸血鬼には、皆、一つの能力を持っている。
血筋が違がければ、違う能力を持つし、兄弟や家族で同じ能力が遺伝している人もいれば、稀にそうでない人もいる。
俺も吸血鬼の一人で能力は”言霊”
言霊は口にしたことをそのまま実現させることだ。
たとえば、何かに向かって、「燃えろ」って言えば、燃えるし。
「苦しめ」って言えば、その人は息が出来なくなったり。
あまり俺は能力を使うのは好きではない。
人が苦しむのを見たくないんだ。
自分がそうであったから。
楼の能力は”重力”
自分の思った力の重力を相手に与え、相手を押しつぶしたり、自分自身が軽くなったり出来る。
どちらにせよ、吸血鬼は世間的に存在は薄いが、知る者には皆に、流れ渡る名がある
【ブロードの駒】
血を操り、血を求め、殺しあう殺人鬼
という意味らしい。
その中でも一番頂点に立つ人が、
【ブロードの指揮者】
楼は煙を吐きながら、話を続ける。
「にしてもお前も残酷だよなー。」
楼が、煙草を灰皿に押しつぶしながら言う。
「ん?」
「だって、わざわざ、お前が大嫌いなこの場所にいるんだぜ?本当は、潰したいほど、この場所が嫌いなくせに。」
「本当は嫌だよ。こんな場所。あの人たちは死んでも、俺の心は晴れないままだ。」
「それも”愛の為に”、ってか?」
苦笑しながら言う楼に、そうだよって返事した。
「あと、楼実験結果勝手にまとめて置いて。俺帰るわ。もう3日間ここにいるし。」
俺も、煙草を灰皿で潰して、ソファから降りる。
「はぁ、了解翠ちゃんのために頑張りマース。そう、翠ちゃん子猫ちゃんとは順調?」
今着ている白衣を脱ぎ捨て地面に適当に置いて話す。
「子猫・・・・・あぁ、紀李の事か?元気だよ。」
楼は紀李の事を子猫と呼ぶ。
急に住み着いた幼い女の子からそう名づけたらしい。
「最近、翠一週間分の仕事3日で終わらしたりして、すぐ帰るよね。
妹ちゃんの捜索よりも子猫ちゃんのほうがお気に入りなんじゃない?」
「あー、紀李はなんか不思議で一人で家に居させるのは不安なんだよ。何かに巻き込まれそうだし・・・・」
それ、お気に入りっていうんだよって思ったのは、楼の心の中にしまった。
「あぁ、それと、記憶操作係りからのでんごーんー。」
楼はいったん水を飲んで、もう一本煙草を取りだして火をつける。
「あ?記憶操作係り?」
「そうそう。翠ってさ、記憶ないでしょ。昔の。だから、記憶が戻る方法があることを見つけたんだって。」
「おい、それちゃんと聞かせろ。」
翠は、白衣を脱いだが、またソファに座り楼の話に集中した。
「同じ、血族の血を飲むと直るんだって。それか、ありえない話だが、人間の吸血鬼。」
「同族か、人間の吸血鬼の血か・・・。」