飛び降り指揮者

□お酒と性格
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『ただいまー』



「おかえりなさいー!」




くたくた状態で帰ってきたところで、玄関を開けるともう、夜ご飯はテーブルに並べていて、いい匂いがした。




こう、お腹へってて、疲れたところに、もうご飯があるってなんだか、いい嫁を持った夫の気持ちだ。






そして、よく定番である、


ご飯にする?

お風呂にする?

それとも─


普通はそこで、私?とか続ける文章だが、翠は仮にも男。


それとも俺?とかいってるのを想像したら、吐き気がしたので、F1のごとく、脳内から消え去った。


たぶん今までで一番気持ち悪い想像をしてしまったのかもしれない。






「今日はいつもより、遅かったみたいですね。何かありました?」


脳内でそんな想像をされてるとは知りもしない翠が、話しかけてきた。



『ほれ、これ翠にやるよ!』



私が投げたのは、先ほど買った赤マルの1カートン。


手に持った翠は急に目がきらきらしている気がしたのは気のせいではないはずだ。



「あっありっありがとうございます!」


噛みすぎだって・・・・。



つっこみはしなかったものの、とても嬉しそうな顔をして、伝えてくるもんだから、私も嬉しいと思った。



『それとこれ!いつもの店に行ったら店主がくれた。』


そういって、一番重いものだった、焼酎を靴を脱いで、テーブルの上に置いた。




「焼・・・・酎・・・ですか?」



『正解。 津祢おばさんに、もらったの!』



「津祢・・・あぁ!あそこのタバコ屋の店主ですね!」



翠はやっと理解したように、両手をぽんと叩いた。




『ってことで、ご飯食べながら飲もうよ。』



「うーん。俺、あんまり飲まないので、すぐに意識飛んじゃうみたいですけど、それでなら。」


『いいよーのもう!』





ささっと二人して、テーブルを挟んで椅子に座り、コップを出して、焼酎とお茶や、水などを混ぜて、作り、夕食と一緒に置いた。




「いただきます。」


『いただきます。』



ふたりして、ご飯を食べながら、ちびちびお酒を飲む。



「あ・・・・美味しいですね。」


私より先に飲み干した翠は、けっこう気にったみたいで、もう一杯と催促する。




『はいはい。』

私がもう一杯作ってあげて、また翠は飲み始める。






「ふー・・・・」


20分たった所だろうか、



私より2杯ぐらい多く飲んでる翠にもう一杯と催促された。




『ちょっとまだ飲んでるから待ってー』

さっきから、翠の飲むスピードが、早すぎる。


そうなると、私の飲む量が減るじゃないか!


「あ?口答えする気か?」









『いやぁ・・・その・・・。』


誰この方!

超口調違いますけど!


とまぁ、さっきの話に続くわけだが、




綺麗な金髪が揺れ、私を赤い顔で見つめながら酒を飲んでいる翠




「文句ないなら、その口を塞いでもいいんだな?」


なにを言おうかと迷ってたうちに、翠との距離は縮まっていき、翠の手が私の顎を掴み、自分の顔へと近づけた。



『ちょっとまって!しっかりしてよっ!』

そういって、顎に掴んでる手を払おうと頑張るけど、力が、強くて叶わない。








「問題無用!」



ちょっと意味ちがくない!?



『待てってば!』





『翠っ!!!』


叫んだにも関わらず、感じたのは、唇に温かい感触。

何が起きたか一瞬よく分からなかったけど、はっと思って、押し返そうとしようとしたら、唇が離れ、小さな声で呟かれた。


”もう、どこにも行くんじゃねぇ"─と




呟かれたときの顔は、ひどく悲しそうに歪んでて、でも、私を見ていなかった。



私を通して、誰かのために呟かれた気がした。




『翠っ!?』


呟いた途端に、人形みたいに、私の方向へ倒れてきた。


急に倒れたもんで、心配したがすぐに寝ているだけと確認できた。




『なんなのよ・・・。』
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