飛び降り指揮者
□仕事とカプセル
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「ただいまですー!」
ふとテレビを見ながら(時々電波なくなるけど)、椅子に座り煙草をふかしていた時事。
玄関はすぐリビングになっているため、ドアが開いた音がすぐに分かった。
翠が帰ってきたのだ。
声の元気よさとは裏腹に、随分と見た目がげっそりしている翠。
『おっかえりぃー!』
灰皿に煙草を押しつぶし、椅子から降り、両手を広げて、翠の方まで走った。
「##NAME1#っ!ぐはぁ!!」
見た目は感動の再開のシーン
翠も抱きついてくるのを想像したのか、同じく両手を広げて待っているところに、溝に一発KO
翠が耐え切れず、玄関のドアに頭を打って、痛みに悶えてる。
私としては一石二鳥だ(意味違う)
『あんたねぇ!三日間綺麗に帰ってこないってどういうことよ!あんたのせいで、町に出ると家に帰るのに苦労するわ、風呂の焚き方が特殊すぎて焚くのにも大変だったし、私が吸ってる煙草売ってないし!』
たぶん最後は私情。
街のありったけのタバコ屋や、いろんなものが売ってるスーパーマーケットぽい所を探したけど、同じ種類だけども、タールが弱いのしかなかった。
とりあえず、なぜか全部翠の性にしたい気持ちでいっぱいだった。
全部全部この三日間にあった不満をぶつけると自然と息が上がる。
「えーと・・・あはは・・・。」
こんな文句をいったにも関わらず苦笑する翠
そんな姿を見てなんか、こんな疲れてまで文句言ってたのが馬鹿になってきて、笑いがこみ上げて来た。
『ははっあはははははは』
翠が急に笑いだした、私に不思議な顔をしていたけど、なぜか止まらなかった。
『翠?』
笑いすぎて涙があふれた状態で、翠の名前を呼ぶ。
「はい。」
いまだきょとんとしている翠に、なんだかんだで、結局いいたかったのはこの言葉だったなとか思いながらそれを伝える。
『ばーか』
「はい!」
そういうと、翠があまりにも笑顔で元気よく返事するもんだから、また笑ってしまった。
いつからだろう。こんなに笑えたのは。
本当に覚えてないぐらいに笑った記憶がない。
なぜか、この人に会えてよかっただなんて、柄にもなく思っちゃったり。
『とりあえず、おかえりっ』
「あらためて、ただいまです。」
それを聞き終えて、私は翠の手を引っ張って、リビングの椅子の前まで移動した。