襟足のアメピン
□出発
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「壱葉・・・!」
「千秋・・・」
「頑張れよ。アタシ、遊びに行くし、『リタイア』じゃなくて遊びに帰ってこい」
「おう、ありがとう」
千秋とは知り合ったばかりなのに、既に親友のようでいて、別れが悲しい。
この少しの期間で、ちょっとみんなの口調が反映されてきてしまっている千秋に愛しさを覚える。
ああ、女同士の恋愛とかそんなんじゃねぇから。
「なにかあったら連絡しろ」
「テメー何しょげてんだよ」
カナのいつもとは違う声に、文句を飛ばす。
「しょげてねぇよ!!!」
「あのな、確かに巻き込んだのはテメェだ。だけどな、巻き込まれてやったのがこの俺様だ」
「いつまでもんな顔してんなよ?ドッペルゲンガー?」
「っは、」
カナは相変わらず、ドッペルゲンガーであり、親友だ。
お互いの額をぶつけ合い、拳をぶつけ合う。
最近じゃ潤さんや千秋にも間違われるほどますます似てきた俺ら。
多分、アッチでバレることはそうそう無い。
「じゃあ、行ってくるわ」
電車のアナウンスが聞こえると同時に、わざわざ授業をサボって見送りに来てくれた3人に告げ、
ホームへと足を踏み入れた。