襟足のアメピン

□特訓
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今のこの空気を壊したく無いと思った。

この二人の居場所を護ろうと思った。




なんで、このタイミングだったのかはわからない。

この前だって、「行く」と伝えて。
私の意思は決まっていた筈なのに。
今、ここで。
もう一度。



決意は固まるんだ。






「言わないよ」

先ほどの返事をして微笑む。

さっきまでの決意が解らないように。
いや、解る人なんて居ない。私以外。





「何?どした?」
「壱葉ちゃん?」

私の変化に気付いたのか、そんな問いかけをしてくる二人。
凄いな。

「なに」

さとられないよう、言葉を紡ぐ。


「お、敬語外れたね〜」
ニヤニヤと笑う潤さん。




それは、私が今考えていることを理解しているかのようだった。







やっぱりこの人は、苦手だ。




「実はさ、今日迎えに来たのは伝えに来るためだったんだ」

「何を?」


潤さんは裏に何かを秘めていそうだから怖い。
これだから腹黒は。


「『カナ』に成りきるための準備をしろって」

「・・・は?」









もう少し、意味がわかるようにくだいて説明してほしい。

なんだか、私の周りの人は私に優しくないような気がする。





「『アッチ』に紛れるなら、『俺』をこなさなきゃなんねぇだろ?」

ああ。
そういうことか。


「口調とかを真似しろってこと?」

「そうだよ。相変わらず察しがいいね」
「どーも」


普通にお礼的な言葉を発する。

まぁ、アレだけど。
かなり流した感半端無いけど。



「しかもさ、『アッチ』の『俺』には『コッチ』と連絡が取りやすいようにって『設定』があんだわ」




めんどくさそうにカナが説明してくれる。





「設定?」

「携帯依存症とか、な」



私が聞き返した言葉に律儀に返事をくれた。


けど、







「は?」

どんな設定だよ。
何、携帯依存症って。
関係あんの????え????



「関係ありまくりに決まってるでしょーが」


潤さんがくつくつと喉を鳴らして笑った。
今日は、ゆるふわだ。
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