黒子のバスケ(夢)
□なんかじゃない
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結局、何も変わらないまま放課後になって、部活の時間になった。
「センパーイ。週末には試合あるんで、あの人、どうにかしてほしいんスけど」
「っ黄瀬!??」
体育館の壁に背中をつけて、スコアをつけていた私は、急に話しかけられたことにすごく驚いた。
「あの人って・・・・・・?」
「はぁ?見ててわかるっしょ。森山センパイ。アレがいつも通りに見えるんスか?」
黄瀬が森山の居る方向を指さす。
つられて私もそっちを向いた。
確かに。
動きがいつもより若干鈍い。
パスの通りも悪いような気がする。
「本人は、アンタに気付かれないように誤魔化してるつもりなんスよ。あれでも」
「え・・・」
「自分のせいで、いつも通りプレイできないって知ったら、アンタ絶対なんかしようとするっしょ?」
黄瀬がこちらを向くことなく、そう言い放った。
・・・・・・そうかもしれない。
焦って、間違った選択肢を選んでしまうかもしれない。
「だから俺が止めにきたんス」
「・・・・・・?」
黄瀬が続けた言葉の意味は、生憎よくわからなかった。
「アンタは、焦って答えを出す。そしたら、絶対森山センパイも気にするに決まってる。それを防ぎに俺は派遣されたんス」
「派遣って・・・」
黄瀬の目線が、森山から体育館ステージに座って、こちらの様子をうかがっている4人に向けたれた。
私もつられてそちらを向く。
そこには、笠松くん、小堀くん、早川に中村くん。
「あの人たちも、心配してたんスよー」
口元に微かな笑みを浮かべ、そう言ってくる黄瀬。
私がそちらを見ていることに気付いたらしい、4人は、それぞれの反応を見せた。
笠松くんはあからさまに顔を背けるし、小堀くんは苦笑い、早川は嘘くさく「あうあうあう」なんてよく聞き取れない言葉を発している。中村くんは、焦っているのかひっきりなしにメガネのブリッジを上げたり、下げたり。カチャカチャとやっている。
思わず笑みがこぼれる。
「もちろん、俺もね」
黄瀬がそう言った瞬間、
笑顔がひっこんだ。
「あざーす」
「え、軽!?なんで!??」
「いや、なんかアンタに言われても・・・有難みを感じないといいますか・・・」
「そりゃあ無いっしょ・・・」
なんだかわからんが、落込む黄瀬。
しょうがないじゃないか。
生理的に無理なんだし。
「でも・・・ありがとう」
まぁ、お礼ぐらいは。
「・・・・・・!・・・アンタ、なんでソレ、森山センパイにできないんスか・・・」
「は?」
「可哀想にセンパイ・・・素直になれない鈍感って・・・不憫だわ・・・」
「不憫なのはお前だよ。どういう思考してんの」
ちょっとよくわからん。
素直。
私は、いつでも素直で居たつもりなのだが何か、違ったのだろうか。