襟足のアメピン

□和
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駅に降り立つ。

「目的地についたら電話とメール」とあの3人に言われたことを思い出す。



まだ目的地じゃねぇからいいか。


そして、潤さんが言っていた『案内人』を探す。



潤さん曰く、
『目立つ奴だから、すぐ見つかるよ。多分、待っててもあっちから声かけてくれる』

だそうで。


特徴も何も教えてもらえなかった。

会えなかったらどうしようか。


むしろ潤さんをどうにかしてやろうか。





そんなことを考えていたら、

ふいに、自分の周囲に視線が集まっているのを感じた。





なんだ?

俺がみられているわけじゃない。




「君が、カナの代理の子?」

「っ!!!!!!」





肩をつかまれて振り返ってみれば、金髪に碧眼で長身のお兄さん。




「うっわ、マジカナにそっくりだねぇ。生き別れの双子とかじゃねーの??」

フランクな喋り方に呆然とするも、この人が『案内人』なんだ、と納得。




「違います。普通の他人です」

「へぇーでもここまで似てるとねぇ。あ、でも一応、君は女の子なんだっけか」

「別にそういうことどうでもいいんで。学校と寮、案内よろしくお願いします」






めんどくさくて、少しイライラしてしまっていた。








「はは、連れねーな。俺、東間棗」

「あづま、なつめ、さん」



スマホをポケットから取り出すと、「ハハ、漢字だろ?」と言って慣れた手つきで入力していった。


「ありがとうございます」




「ああ、あと。うちの学校のこと説明させてもらうね?」


・・・うちの学校?



「うちの・・・えっと、壱要男子高等学校は全寮制です。

で、寮ってのが君にとって問題。

だけど幸いなことにうちんとこの寮は普通は2名ずつなんだけど、君は特別に1人。完全個室だよちなみに一部屋ずつ鍵付き」



ニヤリ、「特別待遇いいねぇ」と笑っている。







流暢な日本語と、名前から生粋の日本人だったのかな、と思う。



「で、理事長の俺をはじめ先生方はマスターキー持ってるけど、君のことはみんな知ってるから。

知らないのは生徒だけ。

普段女子と関わる機会なんて無に等しいから、バレたら犯されちゃうかもね」





冗談っぽく笑ってみせた棗さんだったが、それは確かにそうだ。













なんでこんな危険なところに放り込まれちゃったんだかなぁ・・・








「はい、ここが我が校、壱要男子高等学校でーすっ」


チャラけた棗さん・・・


「え?」


あれ、さっき理事長って言った?よね?この人??


「ん、何?何か質問でもある?」


「り、理事長、なんですか・・・?」


「あ、うんうんそうそう!俺理事長!!偉い人なの!よろしく!!」



軽快に笑って、俺の腕をぶんぶん振り回す棗さんは不思議な人だ。








「あ、ああ。ここでの保護者代わりになってくださるって聞きました。ありがとうございます」


「いーえ。でも俺若いでしょ?だからナメられがちだから気を付けてね」



そういって、頭を撫でてきた棗さん。




「ご心配無く」


必要以上に迷惑をかけるつもりは無い。


「ほんっと、カナに似てるねぇー」








そう言って、私の鼻をつまみあげた棗さんにキッとカナ直伝の鋭い視線を送る。


「あはは、まさにカナのドッペルゲンガーだ」






全くダメージを受けていない彼は「あとは校舎案内みて、わかんなくなったらそこら辺の人に聞け」とテキトーな言葉を残して、敷地内に消えていった。
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