襟足のアメピン

□出発
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新幹線が入ってきてもまだ出発までには時間があったので、俺はとりあえず指定の席に座っていることにした。




席も指定の切符とってるとか・・・変なところで丁寧だよな・・・潤さん



裏になにか意図があるのかもしれないが、指定席となれがお金も大分かかるだろう。



「Dの24・・・Dの24っと・・・・・・あ、ここだ。おい!!!樹!!俺らの席ここ!!!」


・・・うっせ。

ここ公共の場だぞ?オイオイ。
ガキじゃあるまいに。





背もたれの方から飛んできた声。

でもその声はどう考えても声変わりはとっくに終わっているようで低い。




「うるせぇぞ。声抑えろ」


その脇から静かでいて、先ほどの声より低い声がした。


コイツは常識あるみてぇだな。





すると、その二つの声の後ろから、さらにざわざわと声や足音が増えてくる。



オイオイオイオイ。
何十人連れだって新幹線乗る気ですかおめぇら。





ちらりと背後を見やると、ぞろぞろと同い年くらいの男達。

ていうか君らぐらいの歳なら今授業中じゃね?





あ、違うわ。今日土曜じゃん。


今日うち・・・いや、波多野高校が授業あるのは補習。


カナは予想通り馬鹿だし授業出てないしで補習。
千秋は、この前のテストで赤点により補習。
潤さんは、出席日数が足りて無くて無理矢理登校させられてた。






あれ、じゃあサボって本当に良かったのか?


今更ながらだんだんと心配になってくる。




まぁ、あの3人なら大丈夫であろう。


しかし、見送りにも来なかった両親。

別に気にしないけど、建前くらいはしっかりしとけよ。






いろんなことを考えている隙に、脇から声がかかった。




「あ、れ?席確かにここなんだけどな・・・?
 
 あの、席間違えてません?」





さっきの声。



「あ、ああ・・・すいません」

手元に持ってた切符を確認する。
すると、それはD24ではなくてG24だった。


「すぐ移動します」

そう言って、顔を上げたとき。







目の前の連中は目を見開いていた。



「シンフォニアの・・・狂犬?」

「あ?」




カナのことか。

顔似てるもんな。やっぱバレねぇな。




それにしてもコイツら誰だ。

潤さんに覚えさせられた『人物リスト』には載ってなかった気がする。


めんどくさいからさっさと席を1つ前の座席に移動した。







すると背後でわやわやとさきほどの集団が乗り込んでいくのがわかった。


そして、










勢い良く、座席が回転した。












「・・・・・・あ゛?」



本気で意味がわからなかったので眉根を寄せる。





「やっほー狂犬。これから何処行くの?」


さっきの連中と向かい合わせになるように座席は回転させられていた。


カナより気性は荒くないがこれは流石にイラっとする。





「テメェらになんか関係あんのかよ」



「おーこわ。つれないねぇ」

そう言って笑ったのは公共の場でデカい声で話しやがった奴。

れい、って呼ばれてたっけ。



その隣には、まだ一言も話していないがれいって呼ばれた奴を制止してた常識のある奴。

いつきだっけ。




とりあえず出発前なので、潤さんに貰った連絡用の携帯を使って、


シャッター音の鳴らないカメラというアプリを用い、盗撮。

そしてメールで画像を添付して送った。




コイツら知り合い?




盗撮は悪いけど、今は勘弁してくれ。

早速新幹線で、問題起こしたくない。






座席を戻そうとしても、さっきの話していた二人組とは違う人が座席をおさえていて動かせない。





「めんど・・・」


そう呟いて、顔を隠すようにって千秋にもらったボーイッシュなデザインのキャップを深くかぶって、寝たふりをした。















「あ、ちょ、寝ないでよ狂犬」


れい、と呼ばれたクリーム色の頭がなんか言ってきてる。

うっせぇ。




寝てねぇし。



「・・・」

それに対して、相棒は一言も話してないし。
そして座席を抑えていた奴も、クリーム色と何か話ながら俺の隣の座席に座った。



・・・なんでだよ。



いや多分指定の席がそこなんだろうけど。

マジなにこの配置。







めんどくせーから寝ようと思って、本格的に目を閉じたら意識は本当に飛んでいった。




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