長期入院
□エピローグ
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弱虫な自分を―
引き返せない未来を―
森に囲まれた小さな島――
ディオニュソス島
その一番の古屋敷に代々棲む ティグリス家。
そこの666代目
それが私――私には、隔世遺伝というものの せいで
虎の血が濃く出ている
と 言うのも、先祖は人と虎の 異種交配だったらしい
私が生まれる前から遺伝が出ることは、先祖の残した文献で判っていたらしい その通り
赤く燃える様な月に照らされ 私は拒否することも出来ずに、この世に産声をあげた
母は――虎の血を…その姿を、ひと目見たら分かるくらい濃く受け継いだ私を
【世界一可愛い娘】
と言うのが 口癖だった
でも それは、言葉の意味なんて理解できない赤子だったから、
“分かってしまった”
のだろうか……
―――――本心じゃない―――母は、怯えてる
――――赤子の私を…
今になって解った。
「言葉」にし、自分に言い聞かせなければ母には耐えられなかった事実
平凡・普通を 一番愛し安堵する母だったらしいから
父は、そんな私に露骨だった 母に負い目を感じ母の前では私と目さえ合わせない
父は私と2人っきりなると必ず“すまない”と それだけを私に言い続けた―――