One Way
□1.はじまりの季節
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冬獅郎はわかっていた。
『雛森は自分のことなんか見ていない』、と。
桃が冬獅郎を見る眼は幼かった時──まだ桃が冬獅郎を“シロちゃん”と、冬獅郎が桃を“桃”と呼んでいた時──から、変わっていない。
そのことを考える度、冬獅郎は何か重いものが自分にのしかかっているような、鈍い痛みを胸に覚えていた。
「…日番谷くん?」
そう言われてハッとすると、桃が自分を見下ろしていることに気付く。
「………ハァ……」
冬獅郎は思わず大きなため息をついた。
…やっぱりダメだ…。
冬獅郎はまだ桃より背が低い。
『3つも歳が離れてんだ、しょうがねえ。俺はこれからデカくなる…』
桃に見下ろされる度に悲しくなる自分に言うセリフだ。
でも…ダメだ。
やっぱり落ち込む…。
1人で勝手にテンションが下がりまくっている冬獅郎を見ていられない桃は、
「えっと、日番谷くん!そういえば昨日ね…」
と、明るい話題を探して冬獅郎を元気づけようとする。
冬獅郎は、この悩みを作り出しているキッカケは桃なのだが、彼女の声を聞いていると癒されるような、救われるような気がした。
そして冬獅郎は
『俺のものに
なってくれなくたっていいから…。だから、ただずっと側で雛森の声を聞いていたい』
と、目を瞑って願うのだった。