One Way
□2.再会
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1年1組の教室の前で桃に「じゃあな」と一言告げて、冬獅郎は自分の教室へと歩を進めた。
『雛森とは違うクラスだったけど…』
冬獅郎は、嫌でも自分の頬が緩むのを感じた。
『…同じ28番…か…』
こんな些細なことで喜ぶ自分はまだガキだな…等と考えながら、1年2組の教室のドアへと手をかけた───
その頃桃は教室の1番後ろにある自分の席に座って、膝の上に置いた両手に目線を落としながら固まっていた。
『ど…どうしよう…こういう時って…なんか話しかけた方がいいのかな…』
桃は自分の右隣に座っているボーっとした男子をとちらりと横目で見て、もう一度両手に目線を向ける。
『変な風に思われないようにしないと…!』
桃は自身の制服の襟を気にしながら、その男子に
「あの…あたし雛森桃っていうの!よろしくね!」
と、思い切って声をかけた。
男子は桃のその行動に予想外にびっくりしたようで、どろんとした眼を大きく見開き、
「あ…はい。よろしくお願いします…えっと僕は山田花太郎です…」
と言って微笑んだ。
『よかった優しそうな人で…』
桃がホッと胸を撫で下ろしていると、ドアが勢いよく開いて一人の青年が現れた。長身で赤い髪、眉毛にはこれまた目立つ入れ墨。花太郎は思わずびくりと肩を揺らしたが、桃の顔はぱあっと明るくなった。