presents
□get a crush!
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あれは先月の14日、所謂バレンタインデーの日のことだった。
雛森は昼の休憩時間に十番隊執務室へと向かっていた。勿論手には、愛しい恋人への気持ちを込めて作ったチョコレートの包みを握って。
しかし目的地に近付くに連れて、雛森の耳に入る女の子達のきゃあきゃあという叫び声は段々と大きくなっていった。
「やっぱり…日番谷くんってモテるんだなぁ…」
雛森は廊下で立ち止まると胸の上でぎゅっと包みを握り直し、元来た道を五番隊執務室へと帰って行った。
そして夜。
「日番谷…くん?」
再度十番隊執務室を訪れた雛森だったが、そこに日番谷の姿はなかった。『あたしお仕事いつもより遅かったからなぁ…』などと考えながらそそくさとその場を去り、真っすぐ彼の自室へと向かう。しかし、そこにも日番谷の姿はなかった。
「うーん…どうしよう」
明かりのない廊下でしばらく待つも、冷たい風に雛森は体を縮こませた。明日も朝は早い。
あらかじめ書いておいた手紙とチョコレートの包みを残し、雛森は自室へと帰ったのだった。
しかし、それから何日経っても日番谷が雛森を訪ねてくることはなかった。他隊の隊長、副隊長同士なのだから、一週間も二週間も顔を合わせないなんてことは普通にあることだ。
でもそれ以前に二人は恋人同士であって。
お互い忙しいこともこれが自分のわがままだということも承知の上だけれど、雛森としては出来るだけ日番谷にそばいてほしいし、二人で一緒に過ごしたい。
「少しくらい会いに来てくれたっていいじゃない…日番谷くんのバカ…」
なんとなく自分から日番谷を訪れるのを躊躇っていたのだが、非番が重なった今日、雛森は冒頭で述べた通りバレンタインデーから二週間以上経ったこの日、日番谷の元へとやって来た。
そして二人は久しぶりに再開したのだった。