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□twin
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「あー、そうだ悠太。数学のノート写さして」
「うん。いいけど、今日は学校に置いてきちゃってないよ」
「いそいでないからいーよ」
いつもの人たちといつもの帰り道を歩きながら、オレは思い出して言った
ノートの提出が来週らしく、前回真っ白なノートを出したオレは先生にちゃんと出すよう釘をさされた
相変わらずオレのノートは真っ白だったから、めんどくさいけど悠太のノートを写すことにした
突然、強い風が吹いてきて思わず目をつぶる
風で前髪が持ち上がるのがわかった
今日は1月にしてはあったかい日らしいけど、やっぱり風は冷たい
「うわ、さっみぃ」
「顔ってどうしても寒いですよね」
身を縮める春を見ながら、顔を防寒するには顔面マスクしかないのかなーなんて考えて、持ち上がったままの前髪を戻そうとポッケから手を出したとき、嬉しそうに千鶴が声をあげた
「やっぱゆっきーとゆうたん顔そっくりだな!!前髪あげられたら見分けつかないんじゃね!?」
「あはは、二人とも風で前髪があがっちゃったんですね。たしかにそっくりです」
隣にいる悠太を見ると、悠太もオレと同じように前髪があがったままだった
「まあ中身は似ても似つかねぇけどな」
「性格似てるなんて言ったらゆうたんに失礼すぎるだろー!!」
千鶴の笑い声を聞きながら前髪に指を絡めて直す
オレも悠太と性格が似てるとは思わないけど―…
オレと悠太が似てるのは顔だけじゃないよ
きっとオレと悠太しか知らない
オレらは昔から人にそういう話をしたりしないから
別に秘密ってわけじゃないけど、悠太にも言おうとは思わなかった
でもなんとなく、気づいてた
それはきっと悠太も同じ
オレと悠太の似ているとこ、というか同じところは、好きになる女の子
そんなにたくさん恋をする方ではないけど、だいたいオレが好きになる子は悠太も好きだった
口で言わなくても、一緒にいればわかる
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