book
□Haschen
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空の色は重く灰色で、今にも雨が降りそう
こんな日には何か嫌なことが起こりそう…なんて思っていたら案の定
彼氏が他の女とキスしてるところを見てしまった
「ヒェン!見てみてこれ〜」
「…なにそれ」
「さっき屋上に飛んできてさーっ!ハート型の葉っぱ!!」
「あー…良かったね…」
「もー相変わらず反応うっすいなー!よし!特別にこのかんわゆいハート型の葉っぱをヒェンにあげよう!!」
「は…いらないし、てか汚いし」
千鶴は同じクラスの男子で、いつも元気…というよりはうるさい
特別仲がいいわけじゃないんだけど、何かに置いて千鶴はよくあたしに声をかけてくる
まあそれは普通に嬉しいんだけど…問題は
「ほらほら〜ぁ、欲しいなら今のうちだぜ?ヒェン!」
そう、千鶴はあたしのことを『ヒェン』と呼ぶ
なんでそう呼ぶのかは不明。てかヒェンって何?って感じ
はじめのうちはなんでヒェンなの?って聞いたこともあったけど、「ヒェンっぽいから」って訳のわからないことしか言ってくれないので諦めた
まあどうせ、大した意味はないだろうしね
千鶴だし
(千鶴はいつも楽しそうだな…)
「ん?何か言った?」
「なんにも言ってないよ。ただ元気だなーって」
「はっはー!若いってのは素晴らしい!!ヒェンもそんな顔してないで若いうちは楽しみなさい!すぐにばーさんになるんだからな!」
「ちょ…そんな顔ってなに…」
「こーんな顔!」
「ばかっそんな顔してないよ!」
「してたって!こーんな!」
そう言いながら千鶴は変顔をする
その顔はあまりにもひどくて、笑ってしまった
「あはは…もー!してないから!」
ふと顔を上げると、すごく優しい顔をした千鶴が見えた
「…千鶴?」
「えっ!?あ、いや…変な顔だったなーって!うはははっ」
「違うってば!」
笑いながら千鶴は祐希くんたちの方に走っていった
(もーばっかじゃないの)
ちょっと余韻に浸ってたけど、ふと彼のことが頭に過ぎった
(あの女の人誰だったんだろ…)(まああたし以外にも居るっていうのはなんとなく…)
やけに周りの声とかが大きく感じた
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