家宝

□その顔が見たくて
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気が付けば2月14日。そう、バレンタインというビックイベントがやってきたのだ。うちの学校も例外ではなく、今年は誰にあげるだの、手作りしただの盛り上がっている。


そんな会話をよそに俺は別のことを考えていた。最近の傾向として、本命チョコ義理チョコに力を入れる人が急増しているらしい(何かの雑誌のバレンタイン特集に載ってた)。義理チョコ、つまり愛情とは別の、友情とか感謝の気持ちをこめて同性に渡すやつだ。いや、男女間の友情もあるが(瀬戸が錦にあげたのが一番いい例だろう)。



女子はいいものだ。チョコ食べながらワイワイやっていても、何とも思われない。その…男同士でチョコを渡しあってたら気持ち悪いだろ。(男の娘と呼ばれる奴は除くとして)。しかし、今まさにそれを実行しようとしている自分がいるわけだ。



昼休みに3ーAに来てから10分間、紙袋を片手に立ち往生していた。窓際から2列目の後ろから3番目。いつもならそこで参考書片手に勉強してるのに。





「…倉間?」





声の主は、俺のお目当て、南沢先輩だった。先輩の手には大量のチョコレート。そういや、貰う約束したとか言ってたっけ。





「そんなに貰って…食べきれるんですか」



「大丈夫、全部お母さんにやる」





そういう問題じゃない気がする。仮にも、あんたの為に一生懸命作ってくれたやつをよくも簡単に捨てれるな。

よくよく見ると、先輩の机の横にも綺麗にラッピングされたソレが沢山かかっている。





「でも、まだ本命を貰ってないんだよね」



「はっ?それだけあれば…」



「違う違う」





なんだ、本命貰えないんじゃん。先輩、だっせ。



そう言って笑ってやったが、先輩の腕の中には、女子特有のピンクとかチェックの手紙も混じっていた。

その中には丸っこい字で媚び売った言葉が並んでいるんだろうな。





「…それ」





先輩が指さした先にあったのは、俺の手にある紙袋。



「そんなにあるんじゃ要らなかったでしょ?」





時々自分の性格が嫌になる。素直じゃないし、捻くれている。





「いや、欲しいな」





…意味わからない。さっきお母さんにやるとか言ってたじゃん。さっきと矛盾してるし。





「暇だったから作ったんです」





嘘。暇なんかじゃなかった。浜野と速水との約束も断ったし、宿題も終わらなかった。でも、これだけは完成したかった。





「これ、本命として受け取ってもいい?」





あぁ、俺はこの顔が好きなのかもしれない。





「…好きにすればいいですよ」





そして来年も、再来年も台所に立っている俺がいるんだろうな。





その顔が見たくて





(俺は頑張ってしまうのかな)


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南倉!
倉間のツンデレハンパないですね!
もう…瑠奈姉の書く南倉大好きっ…!
ありがとうございました!

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