Silver Flame
□StoryV
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―ゆらり、ゆらり。
日の光の届かない地下牢に、白い身体が揺れている。
両腕を拘束する鎖の先は、固く冷たい天井に固定されていて、狭い空間に小さな音を散りばめた。
吊るされた人物は、俯いたままぴくりとも動かない。
白銀の髪の下で、まるで死んでいるかのように目を閉じていた。
「おい、起きろ!」
突如、狭い地下牢に怒声が響き渡った。
牛革の鞭が空気を薙いで、重い一撃を少年の身体に叩き込む。
肉を打つ音が響き、吊るされた少年がわずかに眉を寄せた。
「…あ、兄貴。おはよ。今何時?」
猫に似たぱっちりとした目が見開き、鞭を振った張本人――ミルキ=ゾルデイックの姿を映す。
鞭による打撃を受けたとは思えない、けろりとした少年の表情に、ミルキは歯を軋ませた。
「いい気になるなよ、キル。」
負けじとタバコの火を彼の胸板に押し付けてやるが、皮膚が焼け、煙を上げてもキルアの表情には変化が見られない。
「あちち。そんなぁ。俺だって結構反省してるんだぜ。」
いけしゃあしゃあと言ってのけるキルアに、ミルキは今度こそ、切れた。
「ッッッッ!うそつけ!」
こめかみにびしりと血管を浮かべ、肩が抜ける勢いで鞭を振るう。
―ピシィイッ!
肉を打つ音が響く。
しかし、鞭がキルアを打った様子はなかった。
「!?」
何が起こったか理解できず、ミルキが思わず目を見開く。
キルアも、わずかに驚いた様子で、ミルキの背後を見つめていた。
「ミルキ、そこまで。」
甘く、涼やかな声がミルキの耳元で囁いた。