Silver Flame
□StoryU
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「あぁあぁあぁっ」
傍で、ミルキが脇腹を抑えて呻いている。
断末魔にも似たそれを聞きながら、キキョウは顔を押さえて、その場にくずおれた。
「ま…ちなさい…キル…!」
ジクジクと疼く顔の痛みに声を震わせ、彼女は押さえた指の隙間から、目の前に立つキルアを睨む。
「ハァ?」
しかし、キルアは母親の視線をものともせず、血にまみれた銀食器をその場に投げ捨てた。
「――うるせぇよ。」
冷たい光を放つ青の瞳に、キキョウはびくっ、と肩を震わせた。
「き、キル…。」
震える手を我が子に向ける彼女の心を満たすのは、恐怖ではなく、有り余る歓喜。
(あぁ、キル!)
(なんて、なんて冷たい視線なの!)
電気に似たしびれが、彼女の背筋を駆け降りる。
キキョウの目に映るのは、一人の少年などではなく、冷酷な暗殺者としての彼。
傷の深さに構わずいとおしそうに手を伸ばしてくる彼女に、キルアは煩わしさを通り越して呆れに似たものを抱いた。
やがて、とどめを刺す労力すら惜しいという結論に達したのか、乱暴にドアを蹴り開け、その場を去る。
キルアの背がドアに阻まれ見えなくなった数分後、キキョウは冷静さを取り戻した頭で、駆けつけた執事達に命令を下した。
「―――――――トルイと、イルミを呼んで頂戴。」