BJ

□流れ星にはさせない
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いつだったかお前さんが言った流れ星になりたいという言葉。あれはそういう意味だったのだろうかと目の前に横たわる女をぼうっと見詰めながらそんな事を思った。

脈はある。
脳波も安定している。
確かに,生きている。

だが。


「私…流れ星に,なりたかったの。」

仰向けに寝かされて,白いシーツを掛けられた女は何を見るでもなく(きっと何かを見詰める程の気力はもう残っていなかったのだろう,)そう呟いた。

渇いた瞳からは何の感情も読み取れない。


「流れ星って消える直前に命の炎を燃やして輝くでしょう?そんな,流れ星になりたかったの,私。」


彼女は決して感情を見せない。
留めて,押し殺して,限界が来て。
溢れた感情と共に燃え去ろうとしたのだ。


しかしそんな魔法のような綺麗な灰にはさせない。


瞳をそっと閉じた彼女の表情筋は,ほら,確かに苦しみの感情を表している。
涙を堪えている。


「どうして助けたの?先生…」


震える声で,彼女は私に問うた。

そんなの,決まっているではないか。


「私は医者だからな。」


目の前で静かに消えようとしている命を,黙って見捨てるような人種ではない。
私はそれを救えるだけの技量を持っているのだから。

間違った事をしたなんて,決して思わない。

そう,私は間違っていない。


それなのに。


「私…このまま生きていても,辛いだけだわ。」


ぼろぼろになった心を抱き締めるように,彼女は小さく縮こまって,泣いた。

悲しいかな,それは私が初めて見た彼女の涙だった。







【流れ星にはさせない】




(だが,壊れてしまった心までは)


(私には治せない。)

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