夜櫻

□第四章
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今から3年前。

桜子14歳、光秀18歳。
お互いに、顔も存在も知らずにいた。

出会うきっかけとなったのは、光秀の婚約話である。

「・・・婚約って・・・、私はまだ・・・」
それは、いきなりの話だった。

「前々からあったことよ。あんたも、ここを継ぐからには身を固めてもらわないと。・・・私たちもこの年には結婚していたんだし。ねぇ??」

我が家で一番広い応接間。
夜も更け、寝ようとしていたときの両親からの呼び出しだった。
新垣家は江戸時代より代々、幕府に隠れ外国との貿易を秘密裏に行っていた。明治時代に入り、文明開化が行われた際に一気に栄えた。

光秀で8代目となるが、早めに跡継ぎとして仕事に携わってもらいたいのだろう。

母の言葉に、父は頷くのみ。
また、父曰く
「・・・姉には話しておらぬ。・・・あれのお前への執着は相当なものだからな。けれど、8代目としていろいろやってもらわなくては困る。先方にはもう話はつけて、是と言う返事もいただいておる」


8代目は継ぐつもりで育てられたし。光秀自身もそうなると思っている。しかし、婚約者のことまで言われるとは思っていなかったのだ。

「・・・しばらく時間を。」


・・・言えたのはそれくらいだった。

「まぁ、確かに突然ではあるけどね。心の整理をなさい。また、後日先方とのことについては話をするから」
その母の言葉で、この場は解散となった。

そして。それは三日後に起こった。
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