華びら舞い散る月夜
□第一章
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樒夜の暮らすマンションは、一人暮らし向け、1DKの広さがある。
1Rだと、常に荷物が多い樒夜にとってせまくなることは分かっていたので、ある程度の広さを持つこのマンションに決めたのだ。
「ごめん、人が来るとは思ってなかったから部屋片付けてなくて汚いけど・・・」
あんま片付けがうまくないと自覚している樒夜だが、事前に人が来ることが分かっていればある程度綺麗にする。
今日は、人の訪問の予定がなかったため、ゴミこそ散らかっていないが、レポート関係の資料や用紙が広がっていて、結構ごちゃごちゃとしていた。
先にあがった樒夜は、陽に適当に上がって、と言いながら散らかったものを整理し始めた。
「お邪魔します」
靴を綺麗に並べて上がった陽は、少し遠慮がちに声をかけた。
物珍しそうに、辺りを見回す。
「・・・結構悪戦苦闘しているみたいですね・・・」
そして、部屋の中心にある机に散らばった資料や用紙を見て、レポート状況があかったのだろう陽は、その顔に苦笑いを浮かべていた。
「・・・だから、苦手なんだよ。じゃなきゃ、あいつの紹介と言っても初対面のあんたに頼んだりしない」
少しぶっきらぼうな言い方になったのは、気まずさがあるからだ。
我ながら情けないとは思うけど、文章力が皆無に等しい樒夜にとって、レポートは苦痛以外の何物でもない。
だから、日数の少なさから教科書丸写ししたのだが、結果はこれだ。
・・・むなしすぎる。
「飲み物用意するから、座ってて。ちなみに、使う資料は机に積んであるやつだから」
「わかりました。ちょっと目を通させてくださいね」
そして、樒夜は飲み物の用意をするためキッチンへと消えた。