華びら舞い散る月夜
□第一章
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櫁夜の自宅は、埼玉県にある。大学もさいたま市にあるため、電車通をしていても大体20分もかからない。
しかも、通勤快速まで止まる駅だから、都内の池袋や新宿まで行こうと思ったら最短で30分もかからない。
それが、樒夜がここで一人暮らしする決め手となった一つでもあるのだ。
その駅から、街灯の下を歩き、近所の公園を横目に見て5分ほど歩いた場所に目的地であるマンションがあった。
樒夜と陽は、道中これといって話すこともなくほとんど無言状態で来た。
気まずい、と思い樒夜はちらりと陽を見たが、陽のほうはこれといって気にした感じでもない。
気にしない性格ならいいか、と樒夜は勝手に自己完結をして、ようやく会話らしい会話をしたのは、部室を出てマンションのエントランスまで来たところだった。
・・・部室を出てから、約20分は経過していた。
二人でエレベーターに乗り、樒夜は6階のボタンを押す。
そうした時、やっと口を開いた。
「そういや、葛城は家どこ?やっぱ、大学から近いのか?」
「う〜ん、近くはないかと・・・。東京寄りではありますが、都道府県は一応神奈川ですし」
・・・そう考えると、新宿で乗り換えて・・・ということになるのか。
「そっか・・・。あ、俺んちここだから」
ちょっとした会話でも、やはり時間は経っているわけで。
すぐエレベーターは6階に着き、二人は樒夜の部屋に入った。
時刻は、20時半を回っていた。