□愛玩動物・狗
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 その男の目が、焔のように攻め立てる。
 苦しくて、熱くて、頭がどうにかなりそうだった。






   愛玩動物・狗






「もっ…大佐っ…やめ、ろ…」

「どうした?私は何もしていないだろう?」

 その絡み付く視線に声を絞りだしてやめろと言えば、憎らしいほど楽しそうな声が男から返ってきた。
 東方司令部、ロイ専用の仮眠室のベッドの上で、エドワードは身をよじって羞恥に堪えていた。



 久々に会った。その前に起こしてしまった事件がまずかった。別になんでもないことだと思っていたのだ。
 街でぶつかってきた男にいちゃもんをつけられていつものようにあしらったら、相手が刃物を持ち出してきたのだ。
 勿論、メタメタに叩きのめしてやったのだが、不覚にも頬に一線傷を受けてしまった。
 どうやら、その傷がこの男の癇に障ったらしい。会うなりその傷はどうしたんだと聞かれて正直に話すと、ロイはエドワードに大事な話があるからと言ってアルフォンスを宿に帰してしまった。

「体に傷をつけることさえ腹だたしいというのに、よりによって顔だと!?」

「な、なんだよ。そこまで怒らなくても…いいじゃん」

 すごい剣幕で怒鳴られてエドワードは思わず怯んでしまった。男なんだから顔の傷なんていくらでもできるだろと口を尖らせた。

「女じゃあるまいしっ。てか、別に大佐が怒るようなことじゃねぇっつの!関係ねーだろっ」

 そして多分、この一言がまずかったのだと思う。ここで素直にもう喧嘩なんかしないと笑って言っていたら状況は変化していたのかもしれない。

「…関係ないだと?」

 突然、冷たい空気がエドワードを包んだ。ロイの瞳が、熱く冷たく、不穏な輝きをもってエドワードを射ぬいた。背筋に冷や汗が流れる。 ロイがツカツカと歩いてきて、エドワードの前髪を乱暴に掴み上げた。

「ひっ!」

 無理やり上を向かされたことと、髪を引っ張られた痛みにエドワードは恐怖を感じて引きつった声を上げる。

「お前は私の狗だろう?傷つけていいのは…私だけだ」

 ぐっと顔を近付けられて、そう囁かれた。甘い雰囲気とはかけ離れている言葉なのに、動悸が早まるのをエドワードは感じた。

「しっかり躾けたと思ったんだが…。お仕置きだな」

 続いた言葉に、エドワードは自分の目の前が真っ暗になったような気がした。



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