中・短編
□秘・恋-ヒメコイ-
5ページ/11ページ
それだからかは分からないが、奪ってやろうとか、そんな気持ち針の穴程も無かった。
ただ、あの氷の英雄と迄呼ばれた男が…俺の初恋の相手が…幸せで、いつまでも笑っていてくれれば…ただ、それだけでよかったんだ。
それだけで俺も、ほわほわと心が温かくて幸せで…ザックスも同意見だったらしく、何があっても2人の味方でいようと、こっそり柄にもなく誓いあった。
くるくると、こちらの言葉に一喜一憂する様が…世話しなく変化する表情が嬉しくて、ただ愛しかった。
何よりも、花咲く様な笑顔が2人して大好きだったから──。
でも…そんな些細な事ですら決して、叶う事は無かった。
『今度の任務さぁ。旦那と俺とクラウドの3人で、クラウドの故郷に行く事になったんだ』
そう言って嬉しそうに、クラウドの親に挨拶しちゃおうかな?なんて、馬鹿みたいな事を言ったザックス。
それが、悪友と飲み交わした最後だった。
『帰ってきたら飯にでも連れてってやるからな、と』
故郷には行きたくないと渋っていたクラウドに、帰って来る迄の楽しみに為ればと俺が言った言葉。