中・短編
□変化
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そこまで考えて、ふと未だ撃沈しているザックスが視界に入り、フッ…と気付かれない様に苦笑した。
俺の認識の中に《例外》が現れたのだと。
《有害か無害》《有益か無益》か…果ては、《敵か味方》か──たったそれだけしか無かった筈のボキャブラリーが、ある日突然、ストン…と増えた。
《クラウド》
というモノが…。
そのせいかは分からないが、それからはトントン拍子に範囲が広がっていった。
この《ザックス》も、
そのひとつ。
兎にも角にも、どうやら俺は《クラウド》という認識が増えた事により、恐らくだが『かわいそう』では無くなったのだと思う。
『変わったよなぁ』
確かに、変わったのかもしれない。
「いつまで寝ているつもりだ…」
少なからず以前の俺ならば、撃沈したこの猿を起こす事も、況してや、こうして酒を飲み交わす事など無かったのだから…。
まぁ、起こす方法が空瓶を投げつける…という事だとしてもな。
END
撃沈…
2007/07/16