中・短編
□隣人-トナリビト-
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「いや…
少し、変わったかな」
以前は白かったベンチも、今は若干朽ちていて…自分だけでは無いのだと少し安心した。
座るとギシッと音がして、ペンキが剥がれ剥き出しになった場所をつぅ──と撫で、そこにあった花弁をひとつ指先で掬い取る。
それを掌に軽く乗せ、フゥと息を吹く──
しばらく宙を舞い他の花びらと一緒に地面へと落ちていった…。
この舞い散る花びらの様に…俺のこの思いも、一緒に散って無くなればいいのに──。
朽ちて…
無くなってしまえばいいのに──
ねぇ…セフィロス──?
なんで、俺達は…
こんなにも変わってしまったんだろう…。
この桜並木も、
このベンチでさえも…
確かに、多少は変わってしまったけれど…それでも此所にあるのに──。
貴方は…いない──。
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