中・短編
□隣人-トナリビト-
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公園の入口に来た所で時計を確認すると、予想通りに時間には充分余裕があって…遅刻しなくてすみそうだと、ほっと一息。
長々と続く桜並木に見惚れながら、その一本道をひらすら目的地に向かい進んで行く──。
時折吹く、強い春風に視界を遮られ…それでも舞う花びらがとても綺麗だと、自然と口許が弧を描く。
しばらく歩くと、段々と道が開けてきて、目的地もそう遠くないと思った矢先に見えた白いベンチ──
そこには、既に恋人の姿があった…。
「えっ!?ウソッ!!?」
遅刻したっ!?と、バッと驚いて腕に目をやると…待ち合わせ20分程前で──ほぉと安堵する。
「早すぎるよ…」と思わず苦笑して、自分も人の事は言えないと頬を緩める──
そして同時に恋人の元へと、一直線に桜並木を走り抜けた…。
胸に湧く、嬉しさを噛み締めながら──。
ひらり、
ひらり──
あの頃と何の変わりも無い風景に、ぎゅっと眉を寄せる。
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