中・短編
□Voice
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私物から出て来た、その二つ折りの携帯を、掌で遊びながら一頻り眺める
「俺が、神羅に居た頃使ってたモノか…」
黒色のそれを開く
電源の入っていない、真っ暗な液晶画面
ストラップが何も付いていない事に、自分らしいと笑う
淹れたてのコーヒー片手に、一人掛け用のソファに身体を沈めながら携帯の電源に手を伸ばす
しばらくボタンを押し続けると、起動音と共に液晶に光が戻った
「…なつかしい…な」
液晶に映し出されたモノに“今…俺は、きっと泣きそうな顔をしてるんだろうな”と苦笑する
何も知らなかったあの頃
ただ毎日が幸せで…
永遠にこんな日々が続けばと願い、笑い合った
「永遠なんて…
…ある筈が無いのに」
ザックスに強引に肩を組まれ、はにかみながら笑う今よりも幼い俺…
そして、不機嫌そうに皺を寄せながらも、どこか楽しそうなセフィロス
今は脆くも崩れ去った、確かに存在した日常が目に痛った
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