中・短編
□荊-THORN-【ALL-Side】
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夕暮れの病室は、大概が白で統一されている所為かオレンジ色に染め上がる。
個室の病室に影2つ。
「寒くはないか?」
「はい。大丈夫です」
にこりと微笑み、クラウドは差し出された桃をかぷりとかじる。
「おいしぃ…」
「そうか…」
じゅわりと甘い果肉が溶け、果汁で口内が満たされる。
リハビリも既に終盤になり、あと数回の後…残りは通院をすればいい…と医者からの了承を得たクラウドは、2〜3日後には退院だそうだ。
手慣れた手付きで均等に切られた桃が小皿へと並べられ、セフィロスの手から簡易テーブルへ置かれた。
「キレイ…ですね」
「そうだな」
外を眺めて、夕暮れの一時を二人で楽しむ。
この病室からの景色は好きだな…と、クラウドは思う。
へんにゃりと頬が緩むのは、まったりと過ごすこの空気が、何よりも心地好いからだ。
二人ベッドに腰掛けて、そっと寄り添って…
パチリと、瞳が互いの姿を映す。
それに自然と頬が緩み、ゆるり…交わる唇。
「…甘いな」
ペロリと自身の唇を舐め、にやりと意地悪く言われたセフィロスの台詞に、途端かぁっ…と顔に熱が集中するのがクラウドには嫌でもわかった。
「っ〜〜…桃っ、食べてましたからッ!!!」
クラウドの語意が強くなってしまうのは、完璧に照れの所為だ。
そんな恋人の様子にクツクツと笑ってしまうのは、許して欲しい。と、セフィロスは思う。
まったく、可愛くて仕方がないのだ……。
ぷいっ…と、顔を背けるクラウドは両頬を手で押さえ、うーうー唸っている。
そんな事をしても赤いのはバレバレなのだがな……クラウド。
「耳まで真っ赤だ…」
耳元で囁き、きゅっと後ろから囲い込む様に抱き寄せれば、ビクリッと一瞬身体が驚いた様に強張るが、直ぐ様へしょり…力を抜き、こちらに身体を預けてくる。
その一連が、大変可愛かったのだが…言うと本気で怒ってしまうので、言わずセフィロスは胸へと仕舞っておく。
こうして、
抱き合っていると…
とくり…とくり…‥
互いの心音が聞こえ、ひどく落ち着いた気持ちになる。
「キレイだな…」
「はい…」
先程とは真逆のやり取り、しかし…感じる事は同じだ。
クラウドの手に被さる様に、セフィロスの手が覆い指を絡め、自然手を繋ぎあう…──。
ふと、クラウドがセフィロスを仰ぎ見ると、セフィロスも自身を見ていたらしく視線が再び交わる。
「クラウド…」
ぞくり…と、する様な甘く蕩ける様な声音に、また少し顔が赤くなった。
少しずつ近付く互いの瞳
クラウドは
そっ…と、
その瞼を閉じた…。
また、
日常が始まる…───。
-END-
荊のその後でした。
ではでは、これにて
【荊-THORN-】
を閉幕と致します。
ご観覧、誠に有難う御座いました。
2008/03/16