中・短編
□喪失
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胸に巣食う途方もない虚無感が、己をじわりじわりと蝕む。
痛い…。
イタイ……。
鷲掴まれたかの様に、痛みを訴える心。
自分を取り戻し…その代償の様に蘇った過去の記憶。
その中心には、常に彼の姿があった。
「──────」
名を呼ぶ。
クラウドの両目から、ボロボロと馬鹿みたいに涙が溢れ、床を濡らす。
苦しい。
くるしいよ……。
「ァ………ふっ…うぅ」
ガリガリと、服の上から胸を掻き毟る。
クラウドの嗚咽が、闇に溶けていく。
仕方がないのだと…何度、言い聞かせただろう?
仲間が罵る度に、何度、違うっ!!と叫びたかったか。
何度……
「戦いたくない」
と、泣きたかったか…。
それでも、やらなければならなかった。
不意に溢れそうになる涙を奥歯で噛み締め、表情を偽り…嘆く感情を殺した決戦の時──。
最後の一瞬…
交わった視線。
変わらぬ双眸。
優しい翡翠──。
狂気に、歪んでる筈だった。
でも、あったのは変わらぬ眼差し……。
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