中・短編

□だから、その手を…
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自分の少し前方を不機嫌そうに…けれど、顔を林檎の様に赤くして歩く子供の背中を見て思わず頬が緩む。
何時もより幾分か早い足取りは、少年が如何に不機嫌なのかを物語っている様だ…まぁ、実際には…少年の機嫌は其ほど悪くは無く、只の照れ隠しだとわかっているから何とも言い難い。


些か苛め過ぎたか?と、未だ繋がれたままの手を見やり…苦笑する。

そんな事に思考を巡らせ、再び自分の手を引いたまま前方を歩く少年──基、恋人の背中に視線をやる。


自分よりも幾らか高い体温に、幼さが微かに残る華奢な手…その繋がれた手から温もりが伝わり、その温かさと彼が纏う光に目を細めた。


そして──
この時、俺は誓った…
決して、何があってもこの手だけは離すまいと…この唯一の愛し子を護るのだと──。


「クラウド…。」


きゅっと握る手に力を込め、呼ばれ止まって振り向いた恋人に触れるだけのキスを落とした。



だから、そのを…


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