中・短編
□渇望-カツボウ-
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「貴方が好きよ…」
くだらない。
「愛してるわ」
それは、本心か?
「だから…貴方も、私を見て?」
では、貴様は俺の何を見ていると言うんだ…。
偽りの自分…。
常に、敵ばかりに囲まれる日常で、いったい何を信じろと?
くだらない愛の言葉。
表面だけしか見ない…
偽りの愛情──
でも、何故だろう…?
俺は常に、
その何かを欲していた。
渇望
-カツボウ-
「どうぞ」
「あぁ、すまない」
コトリと目の前に置かれたカップからは、珈琲の良い香り。
「何か考え事ですか?」
「ん…?
あぁ、少し昔の事をな、思い出していた…」
いつの間にか、途中で止められていた書類を指しながら尋ねられ、そんな自分に苦笑しながらも答える。
そう…
もう、昔の事だ・・・。
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