中・短編

□色彩
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春―-…

それは、目覚めの季節


木々が囁き、蕾が綻ぶ

花は美しく笑い咲き


動物は、声高らかに美声を響かせ…


その美しき季節に
歓喜する―-…









 彩










春特有の温かい陽射しのもと、淡いピンクの花弁がひらりひらりと宙を舞う



その内の1枚が手元の本に落ち、ページを捲る手を遮った




文字の羅列の中に突然迷い混んだその訪問者を指先で掬い、クツリと微笑う



「どうやら、読書には向かない様だな…」



そう一人ごちて、パタンと本を閉じた


閉じた本を自分の座るベンチに置き、ふと思い出した様に腕時計を見やる


“そろそろだな…”


針の示す時刻に再び微笑むと、また視線を花弁に戻し


ぽかぽかとした春の陽気に、瞼をゆっくりと閉じた


すると…
風の音と重なる様にして、小さいけれど段々と大きくなる足音が鼓膜を揺らすのがわかる


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