中・短編
□喪失
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ふとした時に交わる視線。
絡まると同時に、
一瞬だけ、柔らかく細められる眼差し……。
本当に一瞬で…気のせい?なんて、思ってしまうけれど、それは気のせいなんかではなくて…。
「クラウド…──」
頬に触れる体温の低い掌も、口許に寄せられる形良い唇も…その全てが温かくて、何よりも愛しくて──
そして…
「セフィ…──」
大好きだった……。
災厄が去り、星が救われ世界が、歓喜に包まれたその日──
俺の愛した人も、この世界からいなくなった…。
喪失
災厄は去った──。
星が救われた──。
人々に再び安寧と平穏が取り戻された──。
星を救った【英雄】。
皆が、喜びに破顔する。
やった。良かった。
みんな無事で良かった…当然の如く笑顔で話す仲間達。
そんな中…
俺も仲間に笑みを返す。
燻る激情には、そっと蓋を被せた…──。
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