NOVELS

□true-es
2ページ/5ページ

『また、出たらしいぜ』
『また?何がだ?』
『何って、あれだよ、あれ』
『あれ?・・・なんだよ、それ』

そんな不毛な会話が打ち出される画面。
暗い部屋の中、
かすかに光るパソコンのモニターに映っているのは、
他人同士のチャットだ。
これで十件目。

彼は小さく口元に笑みを作る。

『なにって・・・あれだよ、trues。噂になってるだろ?』
『え?あれって本当なの?都市伝説かなんかだと思ってた』
 
その間にも彼らの会話は続いていく。
 
しかし、画面の前に居る茶髪の少年は、そこで見ることを止めた。
そのままパソコンの電源を落とし、
ディスプレイの電源も切る。
その部屋は、完全なる暗闇に飲み込まれた。
少年は未だ、ディスプレイの前の椅子に座ったままだ。
 
数秒後、立ち上がり面倒くさそうに歩き出した。
自分の部屋に向かって。

『trues』。

それは、今ネット上で噂になっているハッカーの事である。
 
一年前、突如現れた天才。
経歴不明、
所属も不明、
もちろん正体を知っている者は一人もいない。
そしてそのハッカーの狙いと思われるものは、
ちょうど彼らがネット上に現れる数ヶ月前に起こった新世代オンラインゲーム
『connect GATE Ver.6』で起こった事故。

これが、ネット上を流れている噂である。
それ以外はほとんどガセネタで、
信用ならないものばかり。

だが、その信憑性の無さと、
被害の少なさから現実世界ではほとんど無いものとされている。
評論家などは、最近の犯罪や若年層の精神不安定や不景気と言った、
今の社会そのものだと言う者もいる。
だがほとんどの人間は都市伝説やその類のものと言った認識しかなく、
実際その存在を信じているのはネットを多く使用する人間ばかりだ。
 
だがしかし、信じているものがどんなに少なくても、どんなに都市伝説だと言っても、実際いるのだ。

『trues』は、この世界に。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ