矢井南「はぁ…」
南沢「ん…どうかしたのか?」
矢井南「うっさい…目星ついてんだろ?」
南沢「まあな、大体は…ってとこか」
今一緒に登校してんだけど、周りの視線が…
矢井南「篤志、お前ひとりで登校しろよ。こっちが後々困るんだからよぉ…」
篤志「いやに決まってんだろ??当たり前のこと聞くなよな。」
矢井南(どこが当たり前なんだ…というかいつから当たり前になった!!)
先生「黒煙(くろけむり)さん」
矢井南「先生、くろけむりではなくこくえんです。いい加減覚えてください先生。」
先生「ごめんなさいね。少しついてきてくれるかしら??」
矢井南「わかりました先生…篤志、お前ひとりでいけよ。」
篤志「わかりましたよ…っと」
矢井南、先生去る
篤志「さてと…行きますか…」
ホームルーム
矢井南「はぁ…」
席に座る
篤志「どーかしたのかよ。そんなに落ち込んでよ。」
矢井南「篤志には関係がない…ほっといて、俺のことだから。」
篤志「そうだけどよ…」
?「ちょっといいかしら?」
矢井南「あ?あぁ…別にいいが…篤志のことだったらお断りだぜ??」
?「いいわよ。ついてきてくれるかしら??」
屋上
矢井南「それで??何の用??」
?「あなた…南沢先輩と仲良くしすぎじゃない??」
矢井南「はぁ…多いなぁ…篤志を好きな人、あんな奴のどこがいいんだか…あの変態がなぁ…俺と篤志は幼馴染だ、ただそれだけ。俺としたら好意は全然抱いてないしな。お前…は篤志のことが好きなのだろう??俺にかまってないで告白でも何でもして篤志の気持ちを手に入れたらどうだ??」
?「言われなくてもやってやるわよ!!」
矢井南「はいはい…好きにすれば??俺は戻るから」
教室
矢井南「篤志、お前さぁ…」
篤志「どうかしたのかよ??矢井南あーあれか?俺がモテすぎていて困ると」
矢井南「それもある、さっきの女子は俺と篤志が喋りすぎだということでわざわざ呼び出しされたんだぞ??篤志お前ちったぁ節度守れよ。」
篤志「それは俺のせいじゃねえ。」
矢井南「お前のせいだ、お前が俺に話しかけてくるか…」
フラッ…ドサッ…矢井南が倒れる。
篤志「矢井南!?おい!!…っ…」
ひょいっ…
篤志「軽…普段こいつ何食ってんだよ…」
保健室
矢井南「ん…ここは…」
篤志「保健室だぜ。ったく、急に倒れんなよな。びっくりするから。」
矢井南「そうか…倒れたのか俺は…」
篤志「俺が姫抱きではこんできた。」
矢井南「またほかの女子にどやされることを…ってかお前には好きな女子がいるのだからそいつにやってやれ。」
篤志「俺が…」
矢井南「いい、それ以上は言うな。とりあえず、俺はもう少しここで休んでいく。篤志は教室に戻れ、受験があるのだろう。私は留学することが決まっている。」
篤志「そうか…(ということはもう少しで俺らは離れんのか…)」
矢井南「行け、篤志」
篤志「あぁ…」
篤志去る
矢井南(篤志に…話してしまったな。ほかの女子に伝わるのも時間の問題か…まぁいい…)
部活
天馬「黒煙先輩、どうかしたんですか??」
矢井南「ん?あぁ…別に、何でもない。気にしなくてもいい。」
天馬「そうですか??先輩受験とかあるのに部活に来ていていいんですか??」
矢井南「俺は留学して外国に行くことになっているからな、勉強しなくてもいいんだ。」
天馬「そうなんですか…」
矢井南「さて、お前は練習しなくていいのか??また神童に怒られても知らんぞ?」
天馬「そうでした!!それでは失礼します!!」
矢井南「あぁ…ここまでばらしたら気付くはずだな。女子はこういうことに敏感だからな…」
神童「黒煙先輩…」
矢井南「神童…どうかしたのか。キャプテンであるお前がこんな時間にここにいるとは珍しいな。」
神童「少しお話があってきました…」
矢井南「そうか…ここではなんだ、場所を変えよう。」
神童「はい。」
校舎裏
矢井南「それで??話というのはなんだ。」
神童「はい。俺は黒煙先輩のことが…好きなんです。それでその…」
矢井南「そういうふうに見ていたのか…まぁ確かに最近のお前は俺に目をやる回数が増えつつあったしなだが…そのきもちに答えることは…出来ない…すまんな。」
神童「何で…ですか?俺が…先輩に不釣合いだからですか??」
矢井南「そんなことはない。俺に許婚がいるからだ。このことが、覆ることは絶対にありえない。だから…付き合っていてもどうせ時間が来たら分かれることになる。そんなことになって…もし馴れ合っていて離れがたくなったらどうする??そういうことになるのなら、私は最初から人となれ合わないようにしているつもりだ…どうする??分かれることを承知で付き合う…それだと俺が困るな。そうだな…俺を好きだっていう気持ちを今ここで捨てるか、それとも、俺と一回だけデートでもして別れるか…好きな方を選べ。俺は今ここで俺を好きだっていう気持ちを…っ…篤志!!篤志なのか??」
ダッ…
矢井南「篤志!!…あいつのことだろうから最初から俺たちの話を…クソッ…篤志だけには話さないと決めたのに…神童、どうする??お前に選ぶ権利をやる。明日の朝…朝練の時に教えろ。その時までに…答えを決めておけ。俺はもう帰るから…」
神童「南沢先輩のことですか??」
矢井南「そうだな…それもある…といっておこうか…それではな。」
神童「はい…。」
矢井南去る
校門前
矢井南「…篤志か。」
篤志「何で黙ってたんだよ…。ずっとお前に恋愛感情を抱いてきた俺がバカみたいじゃねぇか!!」
矢井南「篤志…そういうふうに見ていたのか…全く知らなかったな、」
篤志「嘘だ!!知っていただろ!?」
矢井南「…とりあえず、俺の家に来い、話はそっからだ」
篤志「お前の家に行って俺に何の得があるっていうんだよ!?」
矢井南「真実を知りたくはないのか??それに…ここではやめよう。来い、篤志。」
篤志「あぁ…」
黒煙家 矢井南の自室
矢井南「入れ篤志。」
篤志「あぁ…」
パタン…
矢井南「それで??お前はどこまで聞きたい?そしてどこから俺は話せばいい??」
篤志「お前が隠しているすべてのことを話せ」
矢井南「そうだな…卒業式の日、俺は日本を出る。そして、日本にはもう戻ってはこないつもりだ…そしてイタリアに行き俺はそこに永住する。そこにいる許婚と結婚してな。」
篤志「そうか…」
矢井南「これが覆ることはない。」
篤志「それでも…」
ドサッ…
矢井南「あ、篤志、お前…」
篤志「俺が今ここでお前の初めてを奪えばお前はいかなくて済むのか??」
矢井南「どうだろうな…たとえそう…むぐっ…」
Chu…
篤志「はっ…これでファーストキスは…」
矢井南「篤志、ぬるいな。もう誓いのキスとしてファーストキスは許婚に奪われている。もうむりだ。篤志、お前はもう…」
篤志「矢井南は…それでいいのかよ…」
矢井南「…はぁ…どうしてそう…お前は俺を揺さぶってくる??俺…私がどんなに固い決意をしても…あなたはそれを難なく壊してくる…そうしたら私はっ…」
篤志「やっと、皮がとれたな。本性を聞かせろ。」
矢井南「この場限り…だよ??私は許婚なんかと結婚なんてしたくないんだよ。けれど…黒煙家の一人娘として社交的に結婚しないといけないから…私に選択の余地はない。運命に流されたまま動けない私を…篤志はどうしてっ…もう…わかんないよ…自分の気持ちが私は何がしたいんだろうね??」
篤志「矢井南…」
ぎゅう…篤志が矢井南を抱きしめる
矢井南「篤志…今だけ…泣いてもいいか??私はもう泣いてはいけないと思うから…この場を借りて…」
篤志「泣けよ、矢井南。今だけ…感情に流されろ。俺が全部受け止めてやる。」
矢井南「あ…つし…」
ぼふっ…篤志の胸に顔を埋める
矢井南はそのとき…声を上げなかった…矢井南は声を上げずに静かに涙を流した…俺は矢井南を抱きしめていた腕の力を強めた…服の胸のところがぬれていくのがわかった…矢井南はどれだけ感情を抑えているのだろう…自分の感情を抑え、相手の感情を自分の感情のように扱い。自分はただそこに存在するだけ、人形のように…そんな生活が許婚と結婚しても続くのか、そうしたらそのうち矢井南は壊れて自分の命を絶ってしまう…そんな感じがした…
篤志「ったく…俺は好きな人すら守れねーのか…どんだけ無力なんだよ俺…。」
矢井南「苦しい…さっさと離れろ、篤志…」
篤志「もういいのかよ??」
矢井南「さっさと離れろと言っているんだ、篤志。聞けないのか??」
篤志「はいはい…」
離れる。
矢井南「シャワーを浴びてくる…篤志、その服かせ。」
篤志「着るのか??」
矢井南「黙れエロ沢、洗濯するんだよ。俺の涙でぬれてんだろ??洗濯して返す。さっさと脱げ。」
篤志「洗濯する間俺は何を着ていればいいんだ??」
矢井南「スチュワーデス。篤志の服を用意しろ、あと洗濯の準備と風呂の準備な。」
スチュワーデス「畏まりましたお嬢様。お嬢様の仰せのままに。」
スチュワーデス去る
篤志「執事が居んのな…神童みたいだ…」
矢井南「そうか??いるのが当たり前じゃないのか??」
ばんっ…
?「矢井南!!」
矢井南「おっ…お母様??なぜここにいらっしゃるのです??」
母「ごめんねぇ…あの許婚、偽物だったの。だから新しい許婚を…あら??矢井南この子は??」
矢井南「この人は南沢篤志、私のクラスのクラスメイトですの。」
母「そう…きめたわ!!矢井名の新しい許婚!!日本にいられるようにしてあげるわ。」
矢井南「本当!?お母様ありがとうございますわ。」
母「いいのよ。それじゃ、待ったねぇ〜」
母去る
篤志「なんだったんだ…」
矢井南「母だ、気にするな。とりあえず服を脱げ。」
スチュワーデス「服の準備、およびその他の準備が整いました。」
矢井南「そう…俺は風呂にはいる、篤志の服を着替えさせておけ。」
スチュワーデス「畏まりましたお嬢様。お嬢様の仰せのままに。」
矢井南去る
スチュワーデス「それでは服を…」
篤志「あぁ…」
風呂場
矢井南「はぁ…仕方ないといえば仕方ないのだが…ここまでになるのは…俺としては初だな。」
ザアアアアアア・・・・
キュッ…
矢井南「とりあえず次の許婚はどこになるのか…」
バサッ…カチッ…
カチャッ…
矢井南「…篤志、何のつもりだ。」
篤志は燕尾服を着ていました。
篤志「そんなん俺が知りてぇよ。」
矢井南「…まぁいい。ゆったりしているがいい。俺は出かけてくる。」
篤志「んじゃ、テキトーにゆっくりしてるな。」
矢井南「あぁ…それと、ベッドには触るなよ?知っていると思うがな。」
篤志「あぁ…」
矢井南去る

矢井南「はぁ…」
?「黒煙先輩??」
矢井南「なぜ疑問形になるんだ??神童」
神童「いえ…髪をおろしているところは初めて見たので…それでです。」
矢井南「そうか…もう決まったのか??お前の答えは…」
?「矢井南ぁ〜!!」
矢井南「母様!?」
母「次の許婚は神童家よん。ということでよろしくね〜。」
矢井南「え?ちょっ…母様!?」
母去る
矢井南「はぁ…」
神童「えっと俺はどうすれば…」
矢井南「そうか…お前になるのだな……まぁおまえなら合格点だ。いいよ。」
神童「これは喜んでいいんですかね??」
矢井南「いいと思うぞ。というか…デートはいつにするんだ??」
神童「えっと…ちょっと待ってください…考えさせてください…ちょっと急すぎて…」
矢井南「まぁそうだろうな。そういうのが当たり前だな。」
神童「もし…もしですよ。おれと黒煙先輩が結婚したら先輩は俺のことを愛してくれるんですか??」
矢井南「なぁ…ひとつ聞いていいか??」
神童「いいですよ。俺に答えられることなら。」
矢井南「…愛するということはいったいどういうことを指すんだ??そのことに関係する行為のことを言うのか??それともどんな行動であれその愛するという気持ちがあれば成立するものなのか??俺はそれがわからないのだが…お前はどう思う神童。」
神童「…それは…俺にもわからないです…。先輩…それは俺と付き合えば…」
矢井南「わかるというのか??どうだろうな…俺は俺だ、多少の違いがあれど変わることがほとんどない俺は…神童と付き合っていてわかることなのか??俺はそこがまず第一の不安要素の一つだな…まぁいい、俺は帰る。答え、出しておけよ、きっちりとな。」
神童「わかりました。黒煙先輩。」
矢井南「そうそう…あと俺のことは矢井南でいい。黒煙とはもう呼ぶな。いいな??」
神童「わかりました。矢井南先輩」
矢井南「んじゃ。」
矢井南去る
神童「…俺が、矢井南先輩の許婚に…なったのか…それで俺は、矢井南先輩を幸せにできるのか??」
黒煙家
矢井南「ただいま帰りました…」
篤志「矢井南か…お帰り。」
矢井南「あぁ…次の許婚が決まった…」
篤志「そうか…どこだ??」
矢井南「…神童家だ」
篤志「はぁ??拓人のとこか??」
矢井南「あぁ…そうらしい。」
篤志「それで??お前はそれを受けるのか??」
矢井南「神童なら合格点があげられるだろう。たぶん受ける。というか必ず受けないといけなくなるしな、選択の余地がある時に受けることにする。強制は嫌だしな。」
篤志「…そうかよ…矢井南がそれでいいのなら俺はその気持ちはあきらめるわ。」
矢井南「そうしてくれ。その方が俺も助かる。」
篤志「…咎めはしないんだな。」
矢井南「俺には篤志を止める資格などない。篤志は篤志だ。ほかの誰でもないことは解りきっていることだろう??いまさら聞くな。説明がめんどくさい。俺は部屋に戻る…」
篤志「…そうか、やはり俺の気持ちは受け取れないんだな」
矢井南「…すまない。受け取ってやりたいのはやまやまなんだが。…貴族だから融通が聞かないときなんていつもあったことだろう??今回もそういうことだと思ってくれ。」
篤志「…わかった。」
矢井南「…すまない…」
篤志去る

矢井南「…母様。ちょっといい???」
母「何?」
矢井南「…私は篤志と許婚になりたい。私も篤志も両方が好きなんだ…」
母「…いいわ…けれど、後悔はなしよ??」
矢井南「…自分で決めたことだもの。後悔なんてない」
電話
矢井南「…もしもし??篤志??」
篤志「どうかしたのか??」
矢井南「…篤志と許婚になった。」
篤志「…本当なのか??」
矢井南「俺がうそを言って何の得になるんだ?」
篤志「…そうか…これからよろしくな。」
矢井南「…当たり前だ。」
End

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