FF7

□壊した壁の再建築は受け付けておりません!
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俺、ザックス・フェアはクラウド・ストライフに告白した。


もともと仲は良くなかったしクラウドが壁を作ってしまうから、それを壊すのに結構な月日を費やした。

何度も何度も壁を壊して、クラウドに会いに行った。


あいつは俺のことを友達だと思ってくれるようになった。

それは大きな進歩で、本当なら跳ねて大げさに喜びを表現したいぐらい。


でも、俺はあいつのことを友達として見ることはできなかった。


最初は興味。

新兵の中でも一際目立って、その顔立ちと幼さは女を連想させた。

ここらじゃ珍しい綺麗なブロンドの髪、そして大きな目、整った顔立ち、華奢な体つき。

そんな子が兵士、しかもソルジャーを目指しているなんて………と思ったのは、この時が最初で最後だった。

無類の女好きだった俺にとっては、一度構ってみたいなーという興味がわいた。


初対面はあまりいいとは言えなかった。

あの顔立ちのクラウドは、案の定質の悪い先輩に絡まれていた。

このままいけば襲われて出ていくという選択肢しか思いつかない。

今考えると、クラウドなら無茶して頑張りそうだなと思った。

そんなクラウドを俺は助けた。

ただ単に助けたいという思いだけじゃなくて、はっきり言うと興味の方が強かったのかもしれない。

こんなこと初めてだろうに、どんな顔をしているんだろう。

意外に慣れてる?

それとも泣いてんのかな?

でもクラウドは俺があの一瞬で考えた想像を全て裏切った。

なんで助けたんだ、一人で大丈夫だった、あんな奴らぐらい………

そんな意地っ張りな顔。

見かけによらず男前な姿に、初対面にして笑ったのを覚えている。


その次に会ったのは食堂。

クラウドは体も食も他の男と比べて細いみたいだから、きつい訓練のせいであまり食べれずにいた。

辛くて喉が通らない、という経験は俺にもあった。

でも無理やり喉を通さなければ、体が保たないのは俺が身を持って知っている。

だからクラウドに近づいていろんな話をして、気を紛らわせながら食事が取れるようにした。

クラウドは初めは不服そうだったが、最後の方は諦めて俺に付き合ってくれた。

その時聞いた話だけど、クラウドはどうやら友達を作ってないらしい。

初対面の対応やその外見で、あまり人が寄らないんだらうなと思ったら、一緒にやろうとか友達になろうとか、そういう話全部切っていたらしい。

クラウドらしいというか、なんというか………

そんなに壁を作ったらいつか取り返しのつかないことになるぞって言ったら、俺は馴れ合いをするためにここに来たんじゃない、と返された。

その後、だからザックスさんももう俺に近寄らないでください、視線が集まって居心地も悪いです、とも言われてしまった。

そこまで言われてしまった俺は、怒るでも悲しむでもなく、大爆笑。

目の前のクラウドや、周りでひやひやと話を聞き耳立てていた人たちは、さぞかし驚いただろう。

俺には人と関わるのを恐れてる子供にしか見えない、と言うと、クラウドは怒ってしまったみたいで何も言わず出ていってしまった。

ちょっと言い過ぎたかな?と思ったけど、この難しい生き物をどう攻略しようかと考えると楽しくてたまらなかった。

アンジールもこんな気持ちだったのかもしれないと思う。

でもその気持ちとはまた別のものなんだと、気づくのはもっと後だった。


次の次に会ったのは………というより見つけたのは俺が任務後のことだった。

任務で疲れているのに報告をして、その帰りにクラウドを見つけた。

ベンチで倒れるようにして眠っていたのだ。

見つけたときは心臓止まりそうになるほど驚いたけど、寝息を立てていると分かると落ち着いた。

このまま放っておくわけにもいかないし、誰かに襲われても嫌だし、なにより俺が連れていきたかったので自室へと持ち帰った。

クラウドが目を覚ましたのはその日の明日になる直前。

起きた?と問いかけると覚醒したクラウドが面白いほど反応した。

倒れて寝ていたことをいうと、放っておけよと言われる。

襲われたらどうすんだよと苦笑すると、クラウドは言葉に詰まった。

それからは何もなく、ただ話していた。

前にあったことをクラウドは最初気にしてたけど俺がいいよと言うと、ごめんと言って普通に接してくれた。

思えばこの時に壁は壊れかけていたのかもしれない。


それから会った日は話すようにしてるし、任務がない限りご飯も一緒に食べたり、訓練に付き合ったりもした。

いつもクラウドに馬鹿なことする奴らも、俺が一緒にいることで近寄らなくなったらしい。

クラウドは前よりよく笑うようになったし、話してくれるようになった。

敬語はいつの間にかなくなってたし、ザックスと呼び捨てもしてくれた。

壁がなくなってることに嬉しくなった。

俺はというと変わったことは女と会わなくなったことと、他の仲間とあまり飲みに行かなくなったことぐらい。

そいつらはあまり気にしてないけど、お前がそこまで執着するなんて珍しいなと言われた。

ついでに、相手はあれでも男なのに、とも。

それを聞いて自分がやっとクラウドに執着しているか自覚した。

それに仲間は驚いていたけど、本当に気づかなかったんだ。

女と会わなくなった理由は、クラウドと一緒にいたほうが楽しいから。

仲間と飲みに行く時間を減らしたのは、クラウドの傍にいて話したかったから。

クラウドの笑顔がもっと見たい、一緒にいたい、話していたい……

自分でもちょっと行き過ぎじゃね?と思ったことはあるが、クラウドを見るとそんなことも忘れてしまった。


そしてそんな俺に決め手となった出来事が起こる。


ある任務で部下を誰でも一人連れていってもいいと言われた。

こういうのは極稀で、自分がまさかそう言われるとは思わず唖然したのを覚えている。

俺はもちろんクラウドを誘った。

クラウドは迷惑になると言ってなかなか首を縦に振らなかったが、俺が責任をとるし、いい経験にもなると言えば、了承してくれた。

行き先はウータイ郊外のモンスター退治。

あまり数はいないようで雑魚ばかりだったので、こんな稀なケースが出てきたのかなと思った。

長旅を終えて、ウータイにつく。

話に聞いていたクラウドの乗り物酔いは思っていたよりも酷くて、見てるこっちも酔いそうになってしまった。

背中をさすってあげて、できるだけ風にあててやっとのことで着いた。

クラウドはウータイは初めてだと言う。

確かに俺もソルジャーになっても一、二回しか行ったことなかったから、ついでに観光しようかと笑ったらそれいいの?って真面目な顔で聞かれた。

早く終わらせれば少しぐらい大丈夫だと言えば、じゃあ頑張ろうと笑い返してくれた。

そしてやはりと言うべきかクラウドは頭がいい。

新兵の中でも常に上位だと言っていたし、行ったことのないウータイの知識も俺よりあった。

行きたいところがあるのだと生き生きと言ったクラウドを見て、その全てに俺が連れていってあげたいと思った。

そんな楽しみとは別に、ウータイではソルジャー……というより新羅が嫌われている、いわゆる反新羅の人達がたくさんいるので居心地はあまり良くはない。

ヒソヒソと聞こえる影口や嫌な視線に、クラウドの眉間にシワが寄っているのを見て苦笑した。

俺はソルジャーになってそんな経験をたくさんしてきたから、慣れてしまってどうとも思わないけどクラウドにとっては違うらしい。

できれば慣れたくないことなんだろうけど、慣れなければソルジャーなんてやっけいけなかった。

クラウドも順応性は高いのですぐ慣れるだろうと思った。


そしてモンスター討伐、クラウドは柄にもなく緊張していて、それとは反比例するように俺はリラックスしていた。

出てきたモンスターを次々と倒していって、弱そうな敵や致命傷を負った敵をクラウドに倒させる。

訓練とは違ったそれに、クラウドは戸惑いを覚えているようだった。

一段落した頃、思ったより敵の数が多くてクラウドは疲れきっていた。

緊張したなかだし何より初めての本物の戦場なんだから当たり前かとも思う。

終わったかというため息をした直後、殺気が俺のところに届いた。

クラウドのいるところからだった。

まだ生き残りがいたのかと思ったが、どうやら違うようで。

ここら辺一帯を占めていたボスだった。

ボスはいないとの報告だったのに、調査する奴らは一体何を調査していたのかと呆れる。

クラウドが襲われそうになるのと、俺がクラウドの名前を叫んで動いたのはほぼ同時だった。

俺が速いかあいつが速いか………結果は俺の勝ちだった。

間一髪だったおかげで俺はひどい怪我を負ったが、なんとかボスを倒した。

クラウドが駆け寄ってきて、俺の名前を呼ぶ。

泣きそうなクラウドに俺は大丈夫だよ、と声をかけるけどちっとも説得力はないそうだ。

俺はマテリアを取り出してケアルをかける。

クラウドが何かしたいような顔でこちらを見ていたので、肩を貸してくれと言って笑った。

それを報告すると、心優しいことに傷が完全に癒えてから帰ってくるようにと言われた。

それは即ち少しゆっくりしてきていいよということで。

結果オーライじゃんと笑うと、クラウドは怒りたいような嬉しいような、そんな表情を見せてくれた。


それからウータイで花見をしたり、酒を飲んだりして遊んだ。

三日間ぐらい遊んでいたがそろそろ帰らなければいけないだろうということで、楽しい任務を終えて新羅へ帰った。


こんなことがあったわけだが、俺は怪我をした夜に考えていた。

クラウドが泣きそうな顔をした時の、俺の胸の苦しみは一体何なんだろうと。

クラウドへの友達としては異常な執着は?

あいつの行動や言葉、表情にいちいち振り回される俺はどうしてしまったんだろう。

答えは案外すぐ近くにあった。


俺はクラウドのことが好きらしい。

それも恋愛的な意味で。

気づいたときはそれはもう衝撃的で、でもすんなりと心の中に入ってきたその感情は受け入れる他なかった。




そしてウータイから帰ってきて約二週間後、場所は俺の部屋!

勇気を絞りに絞ってアンジールや仲間から喝を入れてもらって挑んだ告白はというと………
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