歌劇小説
□気付かせたりしない
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人を夢中にしたことは何回もある
だけど
自分が夢中にされたことなんてなかった
ましてや
自分と同じ性別の男になんて
【気付かせたりしない】
「………………ハァ」
稽古中にも関わらず大きな溜め息を吐く。
まぁ、稽古中に溜め息したって、かなり近くにいないと聞こえないだろう。それほど稽古場は騒がしい。
今俺は冬公演を控えている大事な時期にもかかわらず、病にかかっている。
病っていっても薬は効かない不治の病。
いわゆる恋だ。
人をこれほどまで夢中で好きになった事があっただろうか?
今頃になって恋する少年の気持ちがよく分かる。
でも、恋は両思いになれるかすら分からないある意味賭のようなものだ。
しかも思いが伝わらない片思いは結構辛い。
アイツは俺の気持ちなんて知らないだろうな……