奉献之文
□夏風、愛しい天邪鬼。
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「殿が左近を要らぬと言っても左近には殿が必要ですよ…」
「…っ、俺は、こんな…体要らぬ…」
愛しい人の手を煩わせる虚弱な体も。
酷い言葉ばかりがつらつらと出てくる口も。
困らせるばかりの幼子のような中身も。
「左近はどんな殿でもお傍にいます」
言わずとも分かっている事も言わせてしまう面倒臭い自分を必要だと、傍にいると言って抱きしめてくれる愛しき君に、
礼を言うのにも大層時間が掛かった。
ひくりとしゃくり上げながら一言一言に偉く難儀した気がする。
「すまん…左近、俺は…お前を困らせたく無かったのに…すまん」
空気が和らぐ。左近はきっと優しく微笑んでいるに違いない。
「きっと熱の所為で気が昂揚したのです…左近は気にしていませんからどうぞお休みを」
泣いたら眠くなるなどと…本当に幼子のようだ。三成は眠り込むまで左近に謝り続けた。
「困らせたく無い…か」
泣き叫んで言った想いは愛しき君に溜め息を落とさせた。
−このいじらしい主から離れる事など死んでも出来ぬ−
それは幸福な諦めの溜め息。
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