駄文

□水鏡、戯る狐
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「仕方が無いから…我慢してやる」


うっすらと微笑む。


極稀れに見れる三成の笑顔に冷徹さは毛筋も無く、左近が年甲斐も無く胸が熱くなり、ごくりと生唾を飲み込む程優美だ。


「刺があれば、悪い虫もつきませんしな…」


「?何か言ったか?」

三成のこぼれるような笑顔がしょっちゅう振り撒かれていたら、彼の回りにはこれまで以上に悪い虫が群がるだろう。
三成の場合無意識に周囲の者を魅了するので始末が悪い。


「いえ、何でもありません」


「そうか…?けど左近に話しをしてみたら気が晴れた。礼を言う」

執務に戻ろうか、と先を行く主が思い出したように振り返る。


「左近、頼みたい事があるんだ」


「何です?」


「俺は笑うのに慣れていない…だから、アレだ。れ、練習を…」


頼み事も三成の苦手とする事。
恥ずかしそうに顔を赤く染めながらそう言った。


「……練習?」


「…頼む…ような事じゃ無いな。左近!忘れてくれ!!」



微笑みだけで左近を虜にしているのに、満面の笑み等習得されたら………色んな意味で恐ろしい。

と思ったが左近の悪戯心が疼いた。



「良いでしょう…」


「ん?」


「左近が笑顔を教えて差し上げましょう………っと!」


いうやいなや、三成の背後から脇に手を入れ、絶妙な指の動きで脇を擽る。



「−−−っっ!!」






その日佐和山の城では聞き慣れない笑い声が高らかに響いたとか。



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