駄文
□手解き、心解き
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後ろから左近が覆うように体を被せてきた
「左近!?何を!」
「手ほどきですよ。ホラ、皺なんか寄せてちゃ琴は弾けませんよ?」
精悍な顔が驚く程近く、己の鼓動が高鳴り顔が火照るのがわかったー
「そう固くならずに…こちらの手は…こう」
耳元で低く色気のある声が囁く。
かっと体が沸騰するようだ。
「さっきの曲…左近の弾いていたのが弾いてみたい…」
「あれですか?…ちょっと殿にはー…」
「俺は出来ぬと言われて諦めた事はない!」
はいはいと返事をして重ねた手を正しい弦へと導く。
〜〜♪〜♪♪
「…左近もう良い。分かったからどけ。邪魔だ」
「…左近はもう少しこのま「上司命令だ」
「…はい」
横に場所を移すと胡座をかいて頬杖えをついて琴と格闘する主を見詰める。
〜♪ ー♪ー
「くそっ!」
〜♪〜♪♪ー♪
ーこれは面白いー
小さくぶつぶつ唱えるように音を確認しながら弾いてゆく。
まるで子供のように真剣になっているのが可愛らしい。
笑いを堪えて見詰めていたが、改めて主の美貌に感心する。
象牙の肌に映える銅の髪。
伏せ目がちの瞳にはけぶるような睫毛がかかる。少し噛んだ薄い唇は赤くなっていた。
〜〜♪〜♪
華麗な琴を弾いている様は琴の精のよう−
ー♪!!!
−…音色はそう言い難いようだ。
「むっ…!!」
「殿、焦らずに」
上手くいかずに相当苛立っているようで、
きっ、と目を吊り上げ睨んでくる
「左近!参考だ!!…参考までにもう一度弾いてみよ!!」
−降参の間違いではないのか−
のそりと立ち上がり譲られた場所へ移動する
「では、失礼して…」
〜♪〜♪〜♪♪〜
男の太い指は弦の上では重さを感じさせ無い。軽やかに跳ねて、優しい曲を紡いでゆくー
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