駄文

□花は桜木、人は武士。
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「みっともなくても…お前には…左近には…」


「殿……」


「生きていて欲しい…俺と、皆と、平和な世で……」




背に回された腕に力が込められる。


震えている





「殿…左近は…殿より…早く…死んだり…しない」


「左近」


見上げた顔は変わらず笑んでいて、一瞬この者は、本当に死期を迎えているのかと思った。



「でも」


「……さ…左近」


「貴方より…長く…生きたり…しませんよ」




涙が
涙を流したとて、この者の運命は変えられない。

酷く歯痒い。小さな子供がどうしようも無くて泣くように、
泣いて、泣いて、


「嘘だ」


「嘘じゃありません」

「嫌だ……」


「左近もです」


「死なないで」


「死にたくありません」


「置いて逝かないでくれ」


「遺して逝きたくはありません」


「左近」


「三成様…」


「どうして…」


「どうしてでしょう」

「恐い…」


「恐がらせて…すみません」


「左近がいなくなった後が恐い」


「見ています」


「そんなの、嫌だ。隣にいろ」


「貴方が望むならいつも…」


「生きてだ。」


「貴方の為に…左近は…風になり…雨に…なる」









「愛しているんだ」


「左近もです…」


「左近」


「愛しています。これからも」


「御免、有り難う、愛している」




「死にたくない…」



死なせたくない、生きて、生きて、死なないで。





愛して





「左近」


「……殿」


「愛している」


「……殿」





「何故死ぬ?死にたくない、死なせたくないと思っているのに−」



「愛している、と言っているのに」



「殿は…左近の分まで長生きして下さい」



「重い…」


「左近の所にはゆっくり…色々……回り道して…から、逝て下さい」


「待ってます」
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