其ノ弐

□きらびやか
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共に濡れ縁に腰かけ、左近は幼い我が子にするようにやわやわと手を叩く。


「何だ。そんな事だったんですか」

左近の呆れたような驚いたような声音に三成はぷっと頬を膨らます。
三成はだって、と言わない変わりに鼻を鳴らした。


原因は左近は佐和山に残り三成が大坂へ登城した時だと言う。

廊下の角。
ひそひそとした声は逆にはっきりと三成の耳には伝わってきた。


−見たか見たか。佐和山の−

−ああ全く。天は二物を与えずとはよく言ったが…あれではようやっと与えられた容姿すら無駄にしていると言うもの−

−あのように趣の無い格好。−

−好事家の島左近と並ぶと正に月と鼈(すっぽん)いや、虎と狐か−

−ははははは−

−ははははは−



左近が推察するに半分以上が三成に対するやっかみだろう。
確かに富貴な牡丹が如き美貌であるのに、否。何を飾らなくても美しくある所為か、多少左近から見ても格好に手直しを加えたくなる時があった。


だが本人が望まないなら左近とて言わない。飾り立てても野望な奴らの事なぞ無視しろ、と簡単な解決法を授けても良かったが、三成にそんな器用な事は無理だ。


「それならば、」

顎に手をやりしばし。左近は膝をぽんと打ち、三成の鼻っ柱に指を一本突き立てた。


「一度左近に全てを任せては頂けませんか?」















その日、大坂の城がどよめいた。


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