企廓書庫

□虎は児といえど爪牙を有する
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「………笑えん。貴様それでも西軍の武士の子かっ!!オチが無いでは無いか!オチがっ!!」


「オチーっ!?本当の事なんですって!!自分でも信じられませんが本当に!」


「大人を馬鹿にする気か!全く…最近の若者は…」


「殿も最近の若者じゃないですか」


「この子はあー言えばこー言う!!」


「おかんっ!!?」



このままでは夫婦漫才よろしくになってしまう。
左近は少々下世話ではあるが、


「殿は項(うなじ)が弱いですよね」


「!!!?」


左近しか知らない三成(主に夜の営み)を思いっきり喋ってやった。





結果









「…幼い子供の頭に鉄扇で三撃もくらわしますかね、…」


「見た目は子供でも中身はオッサンだろうが」


誤解と夫婦漫才は回避出来たが、その代価は鉄扇でしばかれるというものであった。


涙を溜めた目で頭を摩る様子は正に叱られて親から鉄拳制裁をくらった子のようで、三成の知らない左近を見ている気がする。


それに、
年上である筈左近が、己の幼い頃の着物を着ているのが可愛く見えるのは当然の事なのか、はたまた恋人の欲目なのか。
三成の口元は、気を張らないと緩んできてしまう始末であった。



「何でこんな事になったんだか…」


頭を摩り摩り、溜め息混じりに呟く声音も若々しくて、
変な、例えるなら胸がくすぐったい感じがする。


「それはな、坊」


「何ですか『坊』て」


「色欲に毎夜耽るお前に鬼子母が幼子の無垢な心を思い出させる為にだな「適当にも程があるでしょ、殿」


関ヶ原の演説さながらの、身振り手振りを加えた説明を一蹴する。

チッと舌打ちをすると左近は大袈裟とも取れる溜め息を吐く。

子供の様な所作の大人と、大人の様な所作の子供。


異様とも取れる光景だが、中身はそのままなのだから仕方ないと言えば仕方ない。



「…いつになったら戻れるんでしょうかね」


今日何度めか分からない溜め息を吐く。





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